第17章 人形の館
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「さてさて。捕まった方が早いか、取り敢えず状況を掴む方が早いか……」
アリスは3番目の部屋まで引き返していた。
『貧困街の部屋』
所々に募金箱まで設置されている。
こんなところに入ってまでお金を募金する人など居るのだろうか。
チャリンチャリン……
「居るんだ。呆れた」
この空間を見て、救いの手を差し伸べたくなったのだろうか。
振るために持ち上げた募金箱を元の場所に戻して辺りを窺う。
「先ずはカメラからどうにかし………!」
一言呟いた瞬間に、突如近付いてくる人の気配に気付く。
隠れる場所等、無い。
……迎え撃つか
そう決めたアリスが構えて、相手が出てくるのを待つ。
どうやら向こう側もアリスに気付いてタイミングを計っている様だ。
………。
バッ!
同じタイミングで動く両者。
「!」
「!」
お互いの瞳が、お互いの姿を捉える。
ピタリ
「「……。」」
そして、お互い動きを止めた。
「……何で此処に……」
「其方こそ……こんなところで遊んでるほどマフィアって暇なわけ?」
「いや、僕は調査っ!」
「シッ!」
慌てて相手の口を塞ぐアリス。
カツン……カツン……
響き渡るのは自分達のモノとは別の足音―――
「取り敢えず話は後だね。逃げるよアキト!」
「!うんっ!」
アキトが差し伸べられた手を握ると、二人は迷路の奥へと走り出した。
―――
『もしもしー?』
「太宰!早く人形の館に来てくれ!」
『ぷぷっ!矢っ張り怖かったのー?仕方無いなぁ国木田君は』
完全に馬鹿にしている太宰。
然し、それに怒っている場合では無かった。
「詳しい話は後だ!取り敢えず早く来てくれ!アリスが囮に為って屋敷を逃げ回っているんだ!」
『!……どう云うことだい?』
急に声が低くなる。
「矢張り人形は人形では無かった」
『それとアリスが何で関係あるか知らないけど……取り敢えず直ぐに向かうよ』
「ああ……済ま」
途中でブツリと切れる電話に溜め息を着く。
完全に怒っているな……太宰の奴。
「アリスは大丈夫だろうか……」