第17章 人形の館
「あー!国兄!出口!!」
「思ったよりも時間が掛かった。俺は今から仕事なのに……間に合うか?」
「走れば間に合うんじゃない?」
「……他人事みたいに云いやがって……行くぞ」
「はーい………あーーー!?」
突然、大声を上げて立ち止まるアリス。
「な、何だ!?急に大声だして!」
「大事にしてた時計がない!」
「は?時計?」
ゴソゴソと漁り始めるアリス。
「そう!昔から使ってる懐中時計!落としてきちゃったのかも!」
そう云うと進行方向をくるりと変える。
「ちょっ!おい!俺は今から仕事だと何回云えば…!」
「国兄は先に帰ってて良いよ!私は一寸探してからくる!脅かしてきた人に遭ったら聞いてみるから!」
「はあっ……気を付けるんだぞ!?」
「はあーい」
そう云うとアリスは入り口と反対方向へ走り出した。
「俺も仕事」
国木田も走りだし、扉を抜ける。
ガチャリ
「!」
出てきたのは先程入った場所の裏のようだった。
「お疲れ様でしたー楽しんで頂けましたか?」
「ああ……良くできた人形で怖かった」
国木田に話し掛けてきたのはスーツの男。
「館の主人」と名札を付けていた。
「……あれ?そう云えば貴方はお連れ様がいらっしゃったような………」
「ああ……何でも大事な時計を落としてしまったらしくて引き返してしまった。落とし物で届けはないか?」
「時計ですか。いいえ、届いておりませんね」
「そうか。俺も仕事が無ければ探すんだが……時間がない」
「そうだったんですね!もう閉館時間ですし、私達が一緒に探しますのでご安心ください!」
男はニッコリと笑う。
「そうか。では頼む。家は近いから独りで帰れるから」
「判りました。お兄様もお仕事頑張って下さいー」
そう言いながら国木田を見送ると男はニヤリと笑って言った。
「未だ中に居る。探せ」
耳につけているイヤホンマイクから『了解』と反応があると男は館の中に入っていった。