第17章 人形の館
「どんな異能か判らないけど間違いないよ……あの子達は生きてる」
「糞っ!どうする!」
「私達が調査に来たってバレた方が厄介だと思うんだ。取り敢えず、普通に迷路をクリアする。そんで国兄だけ先に出て、治兄達に連絡してよ」
「出来るわけ無いだろう!」
「恐らく、あの売り子の感じじゃ目的は私の筈。私が囮に為れば敵も誘き寄せられるし、一気に叩ける」
「出来ないといってるのが聞こえないのか!?」
「聞こえてるよ、ちゃんと。でも時間がない!」
アリスの表情が暗くなる。
「声が聴こえない人形が数体在るんだよ……国兄」
「!?」
「もしかしたら時間制限があるのかもしれない……手遅れなのかも……しれないんだよ」
泣きそうな声。
「治兄の『人間失格』なら如何にかなるかもしれない……でも此処で事を大きくするのは得策じゃない」
「……。」
アリスの云う通りだ。
何の目的か判らないが、若しこの人形が『元は人間』だとバレてしまったら。
犯人はこの人形を棄てる……処分して証拠を隠滅するだろう。
そして其方に注意がいっている隙にとんずらするに決まっている。
そうなれば熱が冷めるまで表に出てくる筈がない―――
「私はその気に為ればこんな空間、直ぐに逃げ出せる」
「……。」
確かに。
アリスは扉さえあれば外に直ぐに抜け出せる。
アリスの云う通りだ……。
「こんな大っぴらに作戦会議してしまったが大丈夫だろうか……」
敦達の話では脅かし役が別に居るらしいが……
「大丈夫。音を消してるから」
「……。」
抜かりないらしい。
「国兄が怯えてるところだけ使わせてもらってらるから」
「其処は一番消去して欲しいとこだったけど!」
「私、お化けの類いより人間の方が怖いんだけど国兄はどうかな?」
「俺も今そう思ったところだ」
ケラケラ笑って云う少女にガックリと肩を落とす国木田。
「行くよ、国兄」
「………ああ」
アリスを先頭に、漸く二人は歩き出したのだった――。