第17章 人形の館
「それよりも!」
「ああ……如何した」
アリスが声を上げて話を変える。
「『綺麗な子だったから』」
「は?」
「ハッピーアンバースデーが発動した」
「!」
アリスがボソリと呟く。
「いや、それが嘘だとしても俺は十分にアリスは綺麗だと……」
「違うよ国兄。完全に勘違い」
必死にフォローする国木田をため息をつきながら見るアリス。
「別に赤の他人に綺麗だとか誉められたって大して嬉しくないから。そうじゃない。あの売り子、直ぐに取り繕ったんだろうけど『異国の色彩』をした子供が来たことに反応してたんだと思うんだよ」
「!」
『でも洋風の部屋の人形だけは少なかったからあんまり怖くなかったね?』
『うん。日本人形と一緒で怖いイメージがあるけど三体くらいしかなかったね』
国木田の脳裏に、先程の敦と鏡花の声が反芻する。
真逆―――
「睨んだ通り、裏があるのかもね」
「気を付けろ……絶対に離れるなよ」
「うん」
そう云うと、暗い一本道を歩いていき、辿り着いたひとつの扉を潜った。
『助けて……』
『暗いよ……怖いよ……』
入って早々に響く子供のすすり泣く声…
ビクウッ!
「国兄……」
「おっ……俺は別にっ!怖がったりなんかっ……!」
「いや、そんなこと如何でもいいから」
「良くない!」
「いいって。治兄には云わないから。そんなことよりこの声……」
「俺の一大事をそんなこと扱いするな!で!?この声がなんでしょう!?」
恐怖のせいか、国木田の声が上ずっているうえに、言葉遣いまで狂っている。
そんな国木田を呆れながら見て、続けた。
目の前に広がるガラスで出来た透明の迷路。
その所々に鎮座する日本人形。
その人形の1つを指差すアリス。
「あの子達の声だよ」
ヒイッ!
国木田の肩が上がる!
「にににに……人形が喋るわけないだろう!馬鹿なことを云うな!」
「そうだよ国兄。『人形が喋るわけ無い』」
「!?」
冷静に周りを見渡しながら静かに告げるアリスの声で漸く国木田が恐怖の縁から戻ってきた。
「真逆……!」
「あの子達……人間だよ、本物のね」
アリスの表情が険しくなった。