第17章 人形の館
「国木田君がお化け怖いのは判っているよ。安心し給え。私がパパッと行って確認を……」
バンッ!
「お前は全く仕事してないだろうが!そして、行ったところで遊ぶに決まっている!俺が行く!」
勢い良く立ち上がりながら大声で叫ぶ。
しまった……!
そう思ったときには遅かった。
目の前にあるのはニヤーっと笑っている太宰の顔。
「国木田君の意欲には負けるよ。判った。私は大人しく此処で仕事を片付けるとしよう」
愉しそうに机に向かう。
「国木田さん……」
「何も云うな」
「あっ………はい」
―――
「それで私が呼ばれたのか」
「……済まん」
事の経緯を目の前の少女に手短に話す。
「まあ迷わないから捜査には向いてるかもしれないけど」
「頼りにしてる……」
「にしても治兄も意地が悪いなぁ」
と呆れながら云うアリス。
国木田は今回、ケーキ好きなだけ食べ放題と引き換えに休みだったアリスを呼び出したのだった。
「帰りが遅くなったら国兄が治兄に謝ってよ?本当に怒らせると怖いんだから」
「判ってる」
そう云うと件の『人形の館』の前まで歩み寄った。
入り口にある券売場に足を運ぶ。
「大人1名、子供1名」
「はい。大人1名様、子供1名様です……ね…」
チケットを売っていた売り子が券を渡す際にアリスを視界に捉える。
「「?」」
「あ、いえ!綺麗な子だったからつい魅とれてしまって!ハーフですか?」
券を渡しながらアリスに話し掛ける。
「いいえ」
「あ……そうですか。でも異国の方って云われません?」
「良く云われますよ」
ニッコリ笑って券を受け取ると国木田の手を取る。
「行こ、国兄」
「あ……ああ」
「ごゆっくりお楽しみくださいー」
笑顔で2人を見送った売子。
パタンッ
その姿が見えなくなった瞬間に、内線電話の受話器を取る。
「あ、もしもし?先刻入っていった少年に続いてもう一人、異国風の子供が入っていきました!只、保護者も一緒です……」
―――
「何だ?異国人扱いされて立腹してるのか?」
急に手を引いて、急いであの場を去ったアリスを気遣う国木田。
「私はクオーター…純日本人じゃないんだから本当の事云われて怒るわけないでしょ」
「え゙!」
衝撃の事実に驚く。