第16章 休息
「……もう敦君は必要ない筈だろう?」
「それはどうかな?」
「!」
それほどまでに敦君を必要としているのか―――。
腕を組んでブツブツ云いながら考え始める太宰。
その様子に溜め息を1つ着いて、踵を返す。
「何処へ行くんだい?未だあと1つ残っているのだろう?」
太宰に呼び止められ振り返るアリス。
その顔は先程とは打って変わって、少し微笑んでいた。
「後の1つはもう済んだよ、『治兄』。」
「!?」
それだけ云うとアリスは階段を駆け降りる。
太宰は慌ててそれを追う。
「待つんだ、アリス!」
呼び止めるもアリスは振り返らない。
追い付かない――!
階段を降りきり、その前に延びる道を左右確認するがアリスの姿は既に無かった。
「アリス……。」
「いいのかよ……。捜してんぞ。」
「いいんだよ。私が傍に居たら邪魔にしかならないから。」
探偵社の入っているビルの屋上。
その縁に座って足をブラブラさせながら後ろにいる人物の質問に答えるアリス。
「にしても、中也兄がわざわざお迎えなんて。」
「お前の部下が真っ青で帰ってきたからどんだけ怒ってるか見に来たんだよ。」
「あはは。中也兄は矢っ張り私に甘いねぇ。」
「……世話の焼ける妹分だからな。」
被っていた帽子を被り直しながらアリスに手を差し伸べる。
「ほら。帰るぞ。」
「はぁい。」
その手を取って繋ぐと、二人は屋上から姿を消した―――。