第16章 休息
「今お話し中なのに何で邪魔するかな?」
「その男は裏切り者ではありませんか!」
どうやらアリスと男たちが言い争いをしているらしい。
何故、少女と男たちが?
しかも男達のほうが少女に対して腰が低いような。
そんな疑問を浮かべながらも敦は黙って観ている。
「先に帰ってていいよ。」
「然し、お嬢!」
男たちが反抗の姿勢を崩さない。
その態度にアリスの表情が無くなると同時に、纏う空気が一気に冷える。
「「「!?」」」
離れた位置から観ていた敦ですらビクッとするほどの殺気。
「云うこと聞かない大人は嫌いなんだよ…私。」
「「「!!」」」
先程までの可愛らしい声は何処に行ったのだろうか。
殺意のこもったその一言に反応するように、太宰達に向いていた弾丸が一斉に男たちの方に方向を変える。
男達と銃弾の間に少女も居るのだが。
それでも構わず弾が男達に向いているってことは……
弾を止めていたのはあの子ってこと?
敦の中で新たに疑問が浮かぶ。
もう一度だけ聞いてあげる。そう前置きする。
「……先に帰っていいよ?」
「すみませんでした。そうさせて頂きます。」
全員が頭を下げ、足早にその場を去っていく。
アリスはばいばーいと手を振って見送るとふぅっと息をつく。
それから太宰達の方を向き直したと同時に、弾が地面に落下した。
「!」
矢っ張りそうだったのか!
敦の中で疑問がひとつ解決する。
「ゴメンね?お話の最中に。」
困ったもんだねーと苦笑しながら言ったアリスからは先程までの殺意など一切感じられない。
「相変わらずだね。帰って怒られるのではないのかい?」
「誰に?」
「一番は中也かな。私を助けたなんて報告受ければ凄い形相で怒鳴ると思うけれど。」
「まあ中也兄なら怒るかもだけど大したことでは無いよ。」
「それもそうか。」
最初に会ったときみたいに何処にでも居る少女のように笑うアリスに混乱している敦。
その敦を見てクスクス笑うアリス。
「お兄ちゃんもごめんね?」
「えっ…あ……えっと……。」
突然話し掛けられて驚いたのか、まともな返事が出来ない敦。
アリスはそれを見て更にクスクス笑う。