第16章 休息
「あ…こんばんは…。」
太宰が何で険しい顔をしているのかサッパリなほど、少女は何処にでも居る少女にしか見えないが。
「どうしてこんな場所にいるの?此処、夜は危ないよ?」
「イヤイヤ!僕より君の方が危ないよ!こんな夜に一人で出歩くなんて!」
「あはは。私もひとりじゃないよ。」
「え……?そうなの?」
「うん。」
ニッコリ笑って云うアリスに安心する敦。
「敦君。ひと足遅かったようだ。」
「……え?」
漸く口を開いた太宰が眉間にシワを寄せたまま敦に告げる。
告げられた内容が全く理解できずに太宰を見るも、アリスから目を離さない太宰につられて敦も少女の方を向く。
「あー。成程。そういうことか。」
アリスは敦と違い、太宰のその一言で全てを悟ったようにポンッと手を叩く。
「アリスが動くなんて想定外だよ。珍しいじゃあないか。」
「今からのために力を温存しておきたいんじゃないかな?」
「成程ね。」
クスクス笑う少女に盛大に溜め息をつく太宰。
「治兄は―――」
ズガガガガ……!!
アリスが何か言いかけた途端、轟音が遮った。
少女の後方から突如現れた黒尽く目の男が五人ほど、一斉に発砲を始めたのだ。
「危ない!」
「動くな、敦君!」
「!?」
少女を庇うつもりが、隣の太宰に制止される。
確かに暗闇で銃弾はハッキリとは見えない為、避けることは厳しい。
然し、衝撃が一向にやってこない。
それならば撃たれたのは少女だったのではないのだろうか――?
そう考えた敦が少女の方を見ようとしたのと、太宰が口を開いたのは同タイミングだった。
「……とりあえず今すぐ殺す気は無いようだね。」
「え?」
苦笑する太宰の言葉を聞いて、少女の方を見る。
が。
「!?」
少女よりも先に目には入ったのは自分達に僅か10㎝程で到達する距離で停止している銃弾の壁。
「弾が……止まってる?」
敦がそう呟いて壁の向こう側の少女を見ると何時の間にか少女は此方に背を向けていた。
男たちと対峙しているようだ。
慌てて敦が此方に向かおうとするのを太宰が腕をつかんで制止する。
「!?」
止められた事に驚き、太宰に向かって口を開こうとした瞬間、太宰は首を横に振り、少女の方を指差す。