第15章 自覚
「待て!そいつは関係ない!話すから!」
男が慌てて太宰を止める。
「関係ない?我々の荷物を横流しした時点で関係あるのだよ。」
「それはこいつの意思じゃない!」
必死に女の無関係を主張する男を中也は冷めた眼で見ている。
確かにこの男の云う通りだろう。
こんな小娘が『ポートマフィア』の荷物を横流しするなんて考え付く訳がない。
太宰だってそんなこと判っている筈だ。
なのに何故、こうも早く女を刺した?
女に手を上げる太宰らしからぬ拷問の仕方だが、中也は黙って見ている。
色々理由を考えていたが、答えは直ぐに判った。
「そうか。じゃあ此れは只の報復だと思ってくれ給え。」
「報復!?だからこいつの意思じゃないといっているだろう!」
「荷物の横流しの件ではないよ。君は判っているだろう?」
「うっ……」
両手を拘束されているため傷口を押さえることすら出来ずに痛みで泣いている女に云う。
「こいつは軟禁状態だった!外に出たことがないからお前たちの恨みなど買うわけがない!」
「でも、君が唆したから外の世界に出たのだろう?」
「!?しかし!それが何だと云うんだ!」
「+++から逃げる際に追われていたそうじゃあないか。」
「それがどうしたっていうんだ!あんた達には関係無……。」
言葉を最後まで紡ぐ前に男は口を閉ざす。
『情報屋を利用して混乱を招いている隙に逃げるんだ。』
自分が立てた計画を思い出したのだ。
『私を庇った女の子、刺されちゃったんだけど大丈夫かしら?』
『構わないさ。そいつは運がなかった。そいつのお陰で無事だった君は運が良かった。ただ、それだけの事だ。』
『あはは。それもそうね。』
『にしても、女の子か。何でこんな処に?』
『情報屋じゃないの?』
『うーん。見た筈なのに覚えてないな。』
死んだはずの女の子の事なんてどうでもいい筈…
『あー…あの時の。』
先程、
面識が有った反応をした少女。
自分の女の代わりに刺された少女。
「真逆…。」
漸く判ったのか、と云わんばかりに溜め息をつくと笑みを浮かべたまま殺意が籠った眼で男を射く。
「私の大切な恋人を利用した挙げ句、傷をつけたお礼だよ。きっちり返すから受け取ってくれ給え。」
中也は太宰の言葉を聞き終えると傍にあった椅子に座り、目を閉じた。