第15章 自覚
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「中也。」
「んあ?………ああ。終わったか?」
「うん。人が仕事をしているというのに寝るなんて随分じゃあないか。」
目の前に転がる2つの死体を一瞥する中也。
「手前ェでヤりたかったんだろうが。」
「まあね。」
笑顔で返す太宰。
「にしても、アリスのやつ、此れに刺されてたのか。怪我の具合は?」
「確かめたけど傷は見当たらなかったよ。」
「一寸待て。」
「ん?」
「確かめたって…お前まさか寝込みにアイツの服剥いだのか!?」
「うん。」
「否定する姿勢くらいみせろや!」
「大丈夫。刺されたって云ってたところだけしか未だ見てないから。」
「未だってなんだよ……。」
「ふふふっ。」
「手前ェが何しても起きないなんてな。」
「!」
一番警戒しなきゃならねー奴に反応しないなら意味無ェな。
中也は完全に呆れている。
こんな状態なのに何故、お互いに今まで気付かなかったのか。
「つーか、お前、何時からアリスと恋仲なんだよ。」
「え?1年前からだけど?」
「はあ?」
それならあんなに噛み合わないワケ……
「手前ェ、真逆…。」
「そ。一年前の取引から。」
「………。」
なにも言い返せなかった。
否、言い返す気に成れない程に呆れていた。
もう如何でもいい。
取り敢えず、俺を巻き込まないでくれ。
中也は切実にそれだけを願った。