第15章 自覚
怒っているだろう。
折角、助けた人間を殺してしまったのだから。
それも、他人が知れば「下らない」と卑下される理由で。
驚いた顔をしているアリスの顔を黙って見ている太宰。
罵声か号泣か、或いは報復か。
アリスが次の行動に出るまでただただ黙って見ている。
「そっか……良かった。」
「え?」
ポソリと呟いたアリスの言葉を正確に聞き取る事が出来なかった太宰だったが、聞き返す前にアリスはシャワー室へ移動してしまった。
―――
壁に鎖で繋がれているのは女社長。
その家庭教師とやらは椅子に鎖で縛り付けられている。
「ちょっ……何するの!?離して!」
「ああ?」
「ヒッ…!貴方もマフィアだったの!?」
「見たら判んだろ?」
必死で泣き叫ぶ女に睨みを効かせる中也。
何時も通りの格好に着替え、二人の見張りをしている。
「判んないわよ!あの女の子には優しそうにしてたじゃない!」
「アイツは俺達にとって特別なんだよ。手前ェ等と違ってな!」
女の直ぐ側、繋がれている壁を蹴り砕いてみせる。
その光景に女はおろか、男も青褪める。
「へぇ。中也…アリスの事、特別に思ってるんだ?」
「チッ。ホント、タイミングいいな手前は。」
突然、後ろから話し掛けられ盛大に舌打ちする中也。
現れたのは勿論、太宰だ。
こんな状況にも関わらず、笑いながら登場する。
「手前ェのソレとは違うから安心しろ。」
「それは良かった。一緒ならば仕事を其方退けで、どうしてやろうか考えなければいけないところだった。」
「冗談じゃねーぞ、ったく。」
呆れたように云う中也と、ふふふと笑いながら答える太宰。
「……手前ェがすんのかよ。」
「ああ。また『パラサイト』が侵入しているようだからね。」
「!?」
太宰の言った『パラサイト』という言葉に顔を歪めて反応する男。
その反応を太宰と中也が見逃す筈が無い。
「矢張り、何かしら知っているようだね。」
「そのようだなあ。」
「いやっ!俺は何も知らない!」
「そう?」
男が慌てて反論する。
その反論を聞きながら太宰は懐から折り畳みのナイフを取り出すと刃を出し、
「ぎゃああーー!」
「!?」
女の腹部に突き立てた。