第15章 自覚
「私は起きているのに?」
「知るか!コッチは朝っぱらから手前ェ等の痴話喧嘩に巻き込まれて寝不足なんだよ!」
アリスが寝ているため小声でそう言い捨てると完全に寝入る態勢に入る。
「痴話喧嘩、か。」
太宰は悪くないな、と笑いながらアリスの寝顔に視線を戻した。
―――
充分に眠ったのか自然と目が覚めたアリス。
見慣れない天井を少し眺めてから隣に目をやる。
「治兄……。」
何で一緒に寝ているのだろうか。
いや、見慣れこそしないものの此処が太宰の部屋だと云うことは目覚めから少し遅れて動き始めた脳が教えてくれている。
アリスが起きたことなど全く気付かずに寝入っている様子の太宰の額に手を当てる。
「本当に熱はないみたいだね……。」
ホッと一息付きながら手を離すと太宰の目がパチリと開く。
「!?」
「平気だと言った筈だけど信じていなかったのかい?」
「いきなり起きないでよ!ビックリした!」
「ふふふ。それは済まない事をしたね。」
そういってアリスの身体に回していた腕に力を込める。
抵抗されると思っていた太宰だが、大人しく自分の腕の中にいるアリスに少し驚く。
「何時ぞやは凄い悲鳴を上げていたのに今日は大人しいね。」
「あの時は治兄が私のこと、殺そうとしたからでしょ。」
「否、何度も言っているけれど殺す心算なんて無かったのだけどね。」
「あっそ。……今となってはどうでもいいけど。」
「そう?」
アリスから腕を退けて上体を起こす。
「どれくらい眠ってた?」
「ん?丸2日だよ。」
「2日…。」
その間、全く起きなかったってことは。
ずっと此処に居たってことかな……。
考えるために黙り込んだアリスの頭を太宰が撫でる。
「何か食べ物を用意させよう。その間にシャワーでも浴びておいで。」
「ん。ありがと。でもいいの?」
太宰の提案を受けて漸くアリスも身体を起こす。
「何がだい?」
「パラサイト。2日も待たせちゃってるけど。」
「アリスがゆっくりする間くらい放っておいたとして然して状況が変わるわけでは無いさ。」
「治兄が善いならいいけど…増えちゃってるかもよ?」
「それならそれで構わないさ。そういう輩は今でなくても行く末に裏切る。」