• テキストサイズ

【文スト】不思議の国の異能少女

第15章 自覚


「あの娘がアリスが1ヶ月前に会った異能持ちの少女なのだろう?」

「…………。」

「アリス?眠ってしまったかい?」

「……まだ起きてるよ。」

「でも眠いようだね。休んだあとにゆっくり話そう。」

「………。」

おやすみと云われて、頭を撫でられる。

黙り込んだ事を『眠い』と勘違いされた様だ。
取り敢えず、目を閉じるアリス。

疲れていると云えば疲れている。
しかし、今すぐ眠り込むほどではなかった。


それよりも浮かんでいる疑問で、逆に頭が冴えきっていた。

治兄はあの娘をどうする心算なのかな?

「刺された」話をしたときも、太宰が少女の事に関心が有ったことを思い出す。

実際に詳しく話を聞けば更にマフィアにとって有益な異能を持ってる少女だということが判明した。

密輸にずっと関わっていた上、今まで少女がやってきた『密輸』の方法はバレにくい。

それを異能力でやってのけるから尚更だ。

利用すれば今後、荷物を横取りされない為の対策としても役に立つのではないか。

そうなると、目をかけた太宰が側に居る筈――。

そんな憶測がアリスの頭を駆け巡る。

治兄と歳も一緒だったし、大人っぽかったなあ…。
そう思った瞬間に痛む胸の奥。

『そんなに太宰の事が心配か?』

あの時は自覚してなかったけど。

無意識に心配してたんだな…治兄の事。
調子も良くなかったし。

……あれ、そういえば。

「治兄、具合は?」

「……平気だよ。」

カバッと起き上がって太宰に訊ねる。
寝ていると思っていたせいか、少し驚いた顔をしている太宰。

「そっか。なら良かった。」

「……。」

ニッコリ笑って云うと再び太宰の膝に頭を乗せて横になる。


あの娘が此処に居るワケじゃないし、今は考えるのやめよう。

そう思った瞬間に睡魔が襲ってくる。

アリスは頭を撫でられる感覚を幸せと感じながら、今度は本当に眠ってしまった。


「……寝たか?」

「そのようだね。」

頭を撫でながら答える太宰の顔は笑顔だ。

「何で彼処に居たんだ?」

「ん?アリスに会いたかったからだけど?」

「……聞いた俺が馬鹿だった。」

チッと舌打ちしながら中也も目を閉じる。

「真逆、中也も寝る心算じゃあ無いだろうね?」

「その心算に決まってんだろ。」
/ 565ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp