第15章 自覚
「へえー。こんなに可愛らしいアリスの手を汚す心算なのか。」
そう言うと、アリスを腕から解放し、女達の方へと歩み寄る。
「何よ!?どうせ、その子の手はとっくに汚れてるんでしょ!?」
「………。」
アリスは何も言わない。女が正しいから。
「って言うか!勝手に入ってきておいて貴方は一体誰なの?!其方の男は随分仲良さそうだったから、あの娘が此方側に入るなら一緒でも良いって思ってたけど貴方に用事なんかないわ!?」
女の言葉に一斉に男達が銃を構える。
「ああ。君達は無くても私は君達に用があって赴いたのだよ。まだ告げていなかったね。」
「……何の用かしら?」
女が睨むと同時に、男達が安全装置を外す。
そんな状況でも笑みを絶やす事なく太宰は女を見据え、
「私の名前は太宰治。我々、ポートマフィアの荷物の返却を要求しに来たのだよ。」
ハッキリと告げた瞬間に、男達が一斉に発砲した。
「ポートマフィア!?今、向こうの抗争の制圧に行っていた筈なのに何故だ!?」
女の隣に居た男が明らかに狼狽する。
「何故だろうね?勿論、内緒だとも。」
「「「!?」」」
撃たれた筈なのに、その男から平然と答えが返ってきたため、思わず後退りする男達。
その恐怖の元凶は、 ふふふと笑うと後ろを振り返る。
「有難うアリス。」
「どういたしまして。」
アリスがお礼に返事すると同時に、太宰の目の前に有った弾が床に落下する。
「中也。」
「云われなくても判ってるっつーの!」
太宰に名前を呼ばれると同時に床を蹴ると男達に向かっていく中也。
慌てて一斉に発砲するも、弾が中也に中る筈が無い。
「中也ーその二人だけは取って置いてくれ給え。」
「ああ?面倒くせーな!」
そう言いながら男達を片付ける。
数人しか居ない敵を倒すのに5分と掛からなかった―――。
―――
「治兄……」
「ん?なんだい?」
「あの2人、どうする心算なの?」
「気になるのかい?」
太宰が呼んだ車に乗り、帰宅途中の3人。
助手席に中也が、後部座席の上座にアリスが、そのとなりに太宰が座っている。
否、アリスは既に眠いのか太宰の膝に頭を乗せて横になっている。
「だって2人も要らないでしょ?」
「そうだね。」
「じゃあ何で?」