第15章 自覚
「元は+++の従業員だったんだけどね。私の知識が増えればもっと出来ることが増えるはずだって父を説得してくれて勉強や色んな事を教えてくれたの。」
嬉しそうに話す女。
どうやら只の家庭教師、というわけではないらしい。
イチャつき始めた2人を目の前に居た男達全員が慌てて「後にして下さい」と、止める。
「まあ、話は大体判ったよ。」
「え?まだ半分も終わってないけど。」
これ以上聞きたくないのか。溜め息をつきながらアリスが話を遮ると、女が男に寄り添いながらキョトンとする。
「要は、その男に『俺と来い』的なことを云われて、+++…父親を切り捨てて今のこの会社を建てて独自に密輸をし始めたんでしょ?」
「何で判ったの!?」
「いや……何でって云われても……。」
ありきたり等と言えるわけもなく、うんざりしながら返事すると、頭を撫でられて声を掛けられる。
「アリスは頭が良いからね。」
「いや、このくらい考えずとも判……ん?」
「「「……。」」」
自分の頭を撫でている手を目線だけで追うアリス。
他の連中も違和感に気付き、シーンとなる。
「?」
『違和感の正体』は笑顔で首を傾げる。
その姿を見て心底厭そうな顔をする中也と、その姿を捉えて他の連中と同様にフリーズするアリス。
監視の男と女社長のイチャつきぶりに気をとられていた男達が一斉に銃口を向け直す。
「貴様!何時の間に!」
「どうやってここまで来た!?」
「普通に歩いていたらたった今、此処に辿り着いたのだよ。そしたら聞き慣れた声が聞こえたものだからついね。」
ふふふと笑いながら答えたのは今朝方、電話越しに話して以来の男、太宰。
「アリス?……固まってしまった様だね。」
「手前ェのせいだろ。」
「私のかい?何故?」
そう言いながらアリスを抱き締めると女達の方を見る太宰。
「話を続けようではないか。それで?君達は『私の』アリスに何の用なんだい?」
完全に独占する気になったな―――。
中也は太宰の言動を溜め息をつきながら黙って見る。その太宰に抱きすくめられているアリスはフリーズこそ解けたようだが、大人しく太宰の腕の中に収まったままだ。
「その子の記憶力は凄いわ。私たちと組めばもっと効率よく仕事できる。」