第15章 自覚
黙って見つめるアリスと中也を交互に見ると、溜め息を1つ溢し、口を開く。
「そう。私は+++の密輸に大きく関わっていたわ……小学校を卒業してからずっとね。」
「餓鬼に出来ることって何があんだよ。」
中也が女社長…ではなく、アリスに問う。
「さあ…。でも初対面の時に『異能力』を持ってるって言ってたからそれに関係あるんじゃない?」
「『異能力者』だあ?」
アリスが答えると、女の方に視線を戻す。
「信じられないわよね。見た方が早いわ。」
そう言うと、目の前の男に何か指示をする。
指示された男が離席し、戻ってきた際に持ってきた物は先程までウンザリする程に見ていたもの。
「俺達が分けた部品か。」
「そう。あとはコレ。」
そう言って机から取り出したのは『L字型』に似ている黒いパーツが2つ。
大きさは中也の掌程だ。
そのパーツの上に、袋から入った部品を振りかけるように出す。
そして女が手を翳すと、その部品達は光を放つ。
「「!?」」
光が収まって現れたのは一丁の拳銃――。
「私の能力は『バラバラになったものを復元できる』異能力。本来のパーツが揃っていれば壊れていても元に戻せるの。落として割ってしまった花瓶を直したり、今みたいに部品から拳銃を組み立てたりね。」
「……成程。最初から部品で輸入すればバレないし、向こう側としても組立て分のコストもかからないもんね。」
「そういうこと。」
出来上がった拳銃を手に持ちながら説明を終える。
只の部品から拳銃になるまでに掛かった時間は僅か、十数秒。
これならば一日あれば大量の銃器を復元できる。
「私、+++の社長だった男の一人娘だったの。」
「!」
「能力に気付いた父が、ずっと欲しかったらしい銃を組み立てさせたのが始まり。」
「あー。銃器は高値で取引できるもんねー。」
「そう。私は学校にもいかず毎日銃器を作らされていたの。」
「へぇ。」
「私は軟禁状態だった。+++の従業員以外、私の存在を知る人なんか居なかった。そんな時よ。ある日突然、家庭教師なる人が来たの。」
そう言ってアリスと中也の後方をみやる。思わずそちらの方を向く2人。
其所に立っているのはアリス達を案内してきた監視役の男。
男は女と目が合うと扉を離れ、女の隣に並ぶ。