第15章 自覚
「もしもし……。」
『寝不足だろう?アリス。』
「え……。あ、一寸…。でも大丈夫だよ。眠気はどうにでもなるから。」
『また3日とか眠り込むのだろう?感心はしないがまあいいや。この件が片付いたらゆっくり休むとしよう。』
「うん。」
何時も通りの太宰の声。
電話の話を聞いていた限りでは、治兄と中也兄は喧嘩しかしてないけれど。
『昨晩、社員の男とやらが侵入してきたのだろう?』
「あ、うん。見回りって言ってたよ。」
『見回りね。点呼ならば寝静まった夜中にすることではない筈だから男の独断か、或いは誰かの指示か。』
「バレちゃってるなら後者の可能性が大きいのか。」
『そうだね。』
「でも…何でバレる事があるのかな。+++なら兎も角、***と接触なんかしてないけど。」
『それこそパラサイトの連中が覚えてたとしか考えようがない。』
「うーん…。」
『おや?私の推測に納得いっていない様子だね?』
「あの日、倉庫に居た連中の記憶は確かに弄った筈なんだけどなあって思って。」
『成程。接触した時点で『記憶操作』しているのか。』
「そういうこと。其所に向かうまではカメラも無ければ人も居なかった。ファーストコンタクトだった倉庫という空間に居た人間の記憶操作が出来てないなんて事、絶対に無…」
話の途中で何かを思い出したように言葉が途切れる。
『如何かしたかい?』
そして、何かを悟ったのか。
「そういうことか…。治兄、判ったよ。」
アリスは太宰に推測を話始めた。
―――
「ったく。朝っぱらから胸糞悪ィ」
朝食を目の前にブツブツ云いながら茶を飲み干す中也。其所に現れたのはとても20代に見えない男。
「よぉ、お兄さん。」
「あ゙?誰が兄さんだ。如何見たって手前ェの方が歳上だろうが。」
「ははは。そうだろうね。昨日は無口だと思ってたが結構、話すんだね。そして思いの外、口が悪い。」
「ケッ。だったら話し掛けんな。」
そう毒づくと食事をし始める。
「なあ。妹さんは?今日は一緒じゃないのか?」
コイツもアリスが目的だったな。面倒くせぇ…。
アリスが男に関わると、太宰があからさまに不機嫌になるようになった。
そのせいで朝から痴話喧嘩に巻き込まれて気分が悪いというのに。