第2章 夢主
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「○月×日、某障害者養護施設が一夜にして全焼。述べ、83人が死亡した。」
「!如何してそれを!!」
急に暴れた私を治兄は更に強い力で抱きすくめる。
そして続けた。
「83人の内訳は子供6人、大人77人で死因は、一酸化炭素中毒によるもの。」
「……。」
「其の中に異能特務課の職員が3人、軍警職員が8人混ざっていた。」
「公になってない筈なのに……。」
完全に治兄の事を侮っていた。
消した筈なのに。
何処から拾ってきた情報だろうか。
私に構わず、治兄はまだ続ける。
「その後、相次いで大物政治家が3人が死亡し、ある組織が2つ壊滅する。」
「……何で調べたの?」
「アリスの事は何でも知りたいんだよ。」
ニコッと笑う。
先刻迄と違って余裕があるのが忌々しい。
「で?」
「え?」
「未だ終わりじゃないよ。後1つ。」
そう言うと治兄の方を向いて抱きつく。
強気で言ったのに声が震える。
頭を優しく撫でて、抱きなおす。
顔を見られたくなかったから抱きついたのに…。
何でもお見通しみたい。
「ああ…両親かい?」
我慢してた涙が一気に溢れ出す。
小さく頷くと泣き止むまで抱き締めてくれた。
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優しく頭を撫でられてる感じがする。
幸せだな―。
目を開けると目の前には治兄の姿。
そっか。泣きつかれて寝ちゃったんだ、私。
…恥ずかしい。
「目が覚めたかい?」
「うわぁー!」
顔を覗こうとする治兄。
叫びながら治兄を突飛ばし、洗面所にダッシュする。
ベッドから転がり落ちた治兄が変な声で呻いていたけどそんなのは気にしない。