第2章 夢主
案の定、何人かは逃げ出したが、××のパパは急に笑いだした。
「ハハハハハハ!!!お前が私を殺す?冗談も大概にしろ。何も用意してないと思ったのか?」
「え?!何か用意してあるの?!」
質問を質問で返しちゃった。
キョロキョロしてみる。
けど、特に何も見当たらない。
「あれを見ろ。」
「?」
そんな私に××のパパは親切に指を差して指示をする。
けど矢っ張り何にもない。
強いて言えば切られた傷口を押さえて蹲ってる××くらい―――
「死ね」
短い言葉と同時に、天井から光の線が××に降り注ぐ。
私は眩しすぎて思わず目を閉じた。
「んっ……。」
わずか十数秒後。
眩しさが和らいだ気がして目を開ける。
其処には―――
「××!?」
××の姿はなくて、在ったのは××だった肉塊と血溜り。
その姿に足の力が急に抜けて、私はその場に座り込む。
その光景から目が放せない。
「如何して……」
漸く絞り出すように声を出す。
フンッと言い、××の父親だった男が話始める。
「知りすぎたんだよ。」
知りすぎた?
『色々判った事があったんだよ。』
頭に××が昨日云っていた台詞が木霊する。
「何を…何を知りすぎたの?!だって××は、ずっと此処に居たのに!!!」
思わず大声を上げる。
「お前を殺す事を条件に軍警に入る。軍警に入ってあいつがする筈だったのは『異能力者の確保』だった。」
「!」
「異能力は素晴らしい。異能力こそが武器だ。其れを持つ者ばかり揃えれば最強の兵器になる。だが、異能力持ちは少ない。だから…」
「造ってしまおうって?」
男が言い終わる前に、顛末を答える。
足に。
いや、全身に血がめぐるのが判る。
顔が熱い。
頭が沸騰してるみたい。
「!中々、理解力が有るじゃないか!」
男は意気揚々と続ける。
「其の通り。異能力者の生体を徹底的に調べて、非異能力者に異能力を与える研究。其れが我々の目的だ!」
「そんなことのために――――」
男に私の声は届いていない。
興奮した様子で説明を続けている。
「君は異能力者の中でも特に優秀だ!どうだ?我々に協力しないか?此の件の資金提供は政治家やマフィアからと、支持を得ていてだね!」
「許さない!!」
異能力―――『ワンダーランド』