第14章 自覚(太宰side)
自分の事を理解できずに無言を貫いている太宰の耳に、今一番聴きたくなかった声が届く。
『……何で俺が寝起き早々、太宰の野郎なんかと電話しなきゃなんねぇーんだよ。』
「!」
アリスに電話を押し付けられたのだろう。
舌打ちしながらぼやいているのは手違いでアリスと一緒に居る中也。
『おい。手前ェが急に黙り込んだせいで電話押し付けられたじゃねーか。何の話してたんだよ。』
「中也……。」
『なんだあ?その声。何でそんなに苛ついてんだよ。喧嘩でもしたか?』
中也の発言に、喧嘩なんてしてないもん!とアリスが反論している声が聴こえる。
電話を代わる前まで話していた内容を説明している様だ。
一頻り話を聞き終わった後、アリスに身支度して来るよう指示を出した中也。
如何やらアリスは素直に聞き入れて離席したようだ。
『珍しく執着してるじゃねぇか。』
鼻で笑い、ニヤつきながら話しているのが手に取るように判る声。
「……放っておいてくれ。」
『だったら何時も通りにしてろや、面倒くせぇ。何かあっても何事も無いように振る舞うなんざ手前ェの得意分野だろうが。』
「それを今は出来ずに居るからこの様な事になっているのだよ。」
『はあ。手前ェといい、アリスといい、ホント面倒くせぇな。』
「!」
ピクリッ
「………アリスも?」
『電話は手前ェが掛けてきたのか?』
「うん。」
『アリスのやつ、直ぐ出たんじゃねーの?』
「そうだけど……中也、起きていたのかい?」
『俺は手前ェが黙り込んだせいで今し方、アリスに叩き起こされたんだっつーの!』
中也の怒鳴り声に思わず電話を離す太宰。
では何故、アリスが直ぐに電話に出たことを知っているのか。
そう訊ねようとして、やめる。
「……。」
自分勝手な…1つの想像が頭を過ったからだ。