第14章 自覚(太宰side)
「中也と一緒に居るの?」
『?だからそう言ってるでしょ?治兄も判って―』
「そうじゃない。『今』一緒に居るのか訊いているのだよ。」
『ああ。そういうこと。うん。一緒に居るよー。なんと侵入先が5日間泊まり込みの仕事を唱ってて。』
「……。」
『まあ、私が履歴書持っていったときは説明なんて無かったけど……あれ?よく考えてみればそれも変な話――』
「一緒に寝泊まりしてるということかい?」
突然、黙り込んだ太宰に疑問を感じながらも話を勝手に続けたアリスは、何か可笑しな事に気付く。
が、それを言おうとする前に太宰の低い声に遮られる。
『え…あ、うん。そうだよー?』
「部屋も一緒?」
『うん。私が話し合えるよう一緒が良いって言ったから。』
「……ベッドは?」
『あるよー。』
「幾つ?」
『1つ』
「真逆とは思うけど一緒に寝たりしてないよね?」
『え?1つしかないんだから一緒に寝るしか無いじゃん。』
「………。」
『治兄?』
返事が無くなり、不思議そうに太宰の名前を呼ぶアリスの声がスピーカーから聴こえる。
一緒に……?
それでも返事をしない太宰に『おーい』とか『何かあったの?』とか何時も通りの声で呼び掛けているアリスの声がするも、太宰は反応することをしない。
先日も似たような苛つきがあった。
アリスと話している時にだけ時折生じる苛立ち。
それが何か『解って』はいるが、『分かり』たくは無かったモノ。
万能な異能を持つが故に、利用する目的で関わっていただけに過ぎない少女。
そんな少女に抱く感情ではない……筈なのに。
では何故、私はこんなにも苛ついている――?