• テキストサイズ

【文スト】不思議の国の異能少女

第14章 自覚(太宰side)


―――

「――何か必要があればお申し付けください。」

「ああ。日中に動く積もりは無いから各自、しっかり休息するように伝えてくれ給え。」

「分りました。それでは失礼します。」

一礼した後にパタンと閉まった扉を確認して、ベッドに腰掛ける太宰。


「やれやれ。如何したものか。」

そう言いながら取り出したのは携帯電話。
ディスプレイに表示されている時刻は、午前6時をあと数秒で迎える数字であった。

「……。」

少し考えてから釦を押し始める。


まだ寝ているだろうな――。


相手が出ない確率の方が高いのは判っていたのだが電話を掛けずにはいられなかった。


数コールして出なければ切ろう。
そう思いながら電話を耳に当てる。

『………もしもし。』

「!」

僅か2コール目で相手が出るという予想を遥かに越える事態に、思わず声を出すことを忘れてしまう太宰。


『……もしもーし?』

「ああ…ゴメン。お早う、アリス。」

『おはよー治兄。如何したの?こんな朝っぱらから。』

「いや。少々、不測の事態が生じてしまってね。」

『ふーん。あ、仲裁が間に合わなかったとか?』

「………。君は此の辺に居るのかい?」

『あ、中りなの?それは困ったことに為ってるね。』

何時もの調子でクスクス笑いながら話すアリスの声に、思わず笑みがこぼれる太宰。

何故、自分の顔が緩んでいるのか。

ハッとして、慌てて電話を掛けた本題を話し始める。


「其方に中也は居るかい?」

『?居るよ。治兄が中也兄を手伝いにくれたんでしょ?』

「いや。違うのだよ。」

『……如何云うこと?』

太宰に否定され、真剣な声で聞き返すアリス。

「私は潜入が得意な部下に指示を出した積もりだった。」

『………昨日、中也兄とも話してたところだったんだよ。そういうことか。』


思っていたよりもパラサイトの侵食が進んでいる――


「中也は今、如何してるんだい?」

『ん?まだ寝てるよ?起床は7時だからもう少し寝せて……』

「一寸待って。」

『何?治兄は最近、よく私の話を止めるよね。』

少しムッとした様子が声だけなのに判った太宰だが、今はそれどころではない。


身体中の血が沸騰したのではないかと云うほど一瞬で身体が熱くなるのが判った。
/ 565ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp