第14章 自覚(太宰side)
「私を?何で?」
「…珍しい色してるからじゃねーの?」
「あー。成程。」
直ぐに納得した様子のアリスに安堵の息を漏らす。
決して嘘は言ってない。
然し、それ以上の理由も判っている。
見た目だけならば、この少女は間違いなく『愛らしい』のだ。
成長すれば、その色彩も相まって更に目立つものに成るだろう。
この理由が判ると云うことは。
自分もアリスの事を『可愛い』と思っていると告げることと同意。
あの男達と同様にアリスの笑顔に対して顔を赤らめるという反応を以前に示したことがある中也は、数人の男達がアリスを狙っている事に気付いていた。
アリスの他の部分を知れば一筋縄ではいかない…。
否。相手を間違えたと心底後悔するに違いねェが。
「何で溜め息?」
「また他の野郎が夜這いに来るかも知れねぇなって思っただけだ。」
「何時でも話せるように一緒の部屋に居たかっただけで『襲われる』なんて冗談だったのに…真逆、本当に襲われるなんて。」
「お前、頭は良いのに、こういう事にはホント疎いな。」
呆れながら云うと、更に不機嫌な顔をするアリス。
「?何それ。中也兄は私が襲われる事を判ってたとでも云いたいの?」
「ああ。」
「!…私、まだ12歳なんだけど。」
「お前が此処に居る時点で、彼奴等は16歳以上って思ってんだろ。」
「まあ…履歴書にも16歳って書いたけど。でも!如何見ても幼いでしょ?!」
「関係無ぇよ。」
「!」
関係無い。
中也がハッキリと告げた言葉に口をつぐむ。
見た目なんて関係無いのか。
或いは、年齢なんて関係無いのか。
それとも両者なのか。
たとえ、見た目が小学生にしか見えなくても。
実年齢が小・中学生であっても。
『女』であれば良いということなのだろうか。
何れにしても、男達にそんなことを思われているなんて不愉快極まりない。