第14章 自覚(太宰side)
それから何時間が経ったのだろうか――。
ふと意識が浮上し、隣を確認する中也。
其処に居るのは先程と同じ寝顔をしているアリス。
と、云うことは。
矢張り、『予測していた事態』が起きているということだ。
「こんな夜中に何の用だ?」
部屋は勿論、真っ暗。
然し、確信を以て扉のある方向に向かって言い放つ。
「!?」
突然の声に空気が蠢き、動揺しているのが判る。
「目的は妹か?」
「ちっ…違っ…!俺は見回りだ!」
小声で言い返してきた声と内容で、部屋に案内してきた男だと判断した中也は漸く上体を起こした。
「……んぅ……。」
「!」
アリスが小さく唸ると寝返りを打つ。
その行為にさらに驚く男。
「こいつは神経質だからな。それ以上近付けば確実に起きる。居るのが確認出来たなら、さっさと去りな。」
「っ!」
中也が云い放つと男は慌てて部屋を出ていった様だ。
「ったく。」
「私みたいな子供に手を出す積もりだったのかな。」
「!?」
呆れながら呟いた言葉に続くように、思いもしなかった声が掛かる。
「お前…起きてたのか。」
「当たり前でしょ。敵陣で安心して眠ったりするわけないよ。」
「ヘェー。」
「何?その反応。」
「なんでもねーよ。素直に感心しただけだ。」
俺が警戒してやる必要もなかったわけか―――。
ムッとしながら中也を見ているアリスの頭を撫でると横になる。
「今の内からジャブ漬けにでもして自分のモノにしておきたかったんだろ。」