第14章 自覚(太宰side)
「中也さん、何の仕事だったんです?」
「いや、なに。私の友人から荷物を受け取ってもらうだけの用だよ。正直、誰でも善かったから▽▽▽に行ってもらう予定だったのだが指示が反対になってしまった様だね。彼方は私的な事だから如何でも良いのだけど、然し、此方は困った。中也が居ないなら作戦を考え直さなければ…。」
別の方向から質問され、そちらの方など向かずに答える太宰。
その表情は少々険しい。演技だが。
太宰は此処まで言い終わると、ざわつき始めた部下たちに此の場からの撤退を指示し、自分も車に乗り込んだ。
―――
「明日も他の人に聞き込みしようね。」
「アリスがやってくれ。俺は向いてねぇーよ。」
ベッドに横になって話しているアリスと中也。
どうやって寝るかという議題の討論会は、5分後に一緒に寝るという結論を出して終了した。
シングルとはいえ、ビジネスホテル程の大きさのベッドだったため二人で寝ても大きい程だ。
アリスが小さいだけなのかもしれないが。
壁に面して設置されているため、壁側にアリスが、縁側に中也が寝そべっている。
この配置だけは中也が「譲らない」とまで云ったためアリスも大人しく従った。
元々どちらでも善かったが、自分の我が儘で1つの部屋になったという罪悪感もあったからである。
「まあ、そうかもしれないけど…。ホント、何で治兄は中也兄を寄越したの?」
「だから本人に直接聞けって。」
ムーッと唸りながら云うアリスの頭をワシャワシャ撫でながら、溜め息混じりで答える中也。
「……電話したら出るかな?」
「出るだろ。よっぽど取り込んでなきゃな。」
「……。」
中也の返答に考え込むアリス。
その顔を見ると、撫でていた手でそのまま頭をポンポンと叩き、アリスに背を向けて目を閉じる。
「今日は遅ェから明日にしろ。お前も早く休め。良い子が寝る時間はとっくに過ぎてんぞ。」
「うん……。おやすみー中也兄。」
「ああ…おやすみ。」
そう時間が経たぬ内に背後から規則正しい寝息が聴こえる。
「矢っ張り、まだまだガキだな。」
アリスの寝顔を確認してから苦笑混じりで呟き、自分も目を閉じた。