第14章 自覚(太宰side)
―――
「へっくしゅん。」
「風邪ですか?」
豪快にくしゃみをする太宰に、心配そうに話し掛ける黒尽く目の男達。
太宰の部下だ。
「ははは。誰かが私の噂話でもしているのだろう。」
心当たりが山ほど有るからね、と何時もの調子で云うと安心したように息をつく。
「それはさて置いて。如何したものか。」
顎に手を当てて目の前にある死体の山を見ながら考え込む。
首領の命で小競合いの仲裁に来た太宰達だったが少し遅かったようだ。
「***に比べればこの組織は小さいから…。」
「否。そうではないよ。」
部下の一言をハッキリと否定する。
「どういうことですか?」
「君は***が何を主軸にしている組織か知っているかい?」
「勿論です。***は裏取引の金を足の付かない金に変換する…マネーロータリングを請け負っている組織です。」
「そう。***は『貿易商』だ。富豪層の連中を取引相手に持つ、組織というよりは只の一般企業。マネーロータリングは『国外に出す』という、ノーリスクで金が稼げるが故に行っている副業だ。我々の様に暗黒社会に根付いている訳ではない。そんな連中に、幾ら小規模と云えどマフィアが『抗争』で負けるわけなど無いのだよ。」
「「!!」」
太宰の説明に表情が凍りつく部下達。
太宰の云う通り、裏の顔を持っているからといって必ずしもそれが『武力』とイコールではない。
では何故、我々の目の前に、此の惨状が広がっているのか―――。
全員の視線が太宰に集まっている。
太宰はそんなこと等お構いなしに何かを考え込んでいるようだが。
そしてあることに気づき、一番近くに居た部下に問いかけた。
「そういえば中也は何処に行ったんだい?姿が見えないけれど。」
辺りを窺う太宰に首をかしげながら答える部下其の1。
「え?中原さんなら別件で不在ですよ?」
「え?別件?」
太宰が考えるのを止めて、漸く答えた部下の方を向く。
「え?太宰さんが指示されたではないのですか!?『×××倉庫街に行くように』と。」
「………私が?」
「はい。『只の雑用』としか指図書に書かれてないと激昂しながら出掛けられてました。」
「………。因みに▽▽▽は来ているかい?」
「はい。私なら此処に。」
名前を呼ばれた▽▽▽が挙手しながら返事する。
「…………。」
先手を打たれた、か。