第2章 夢主
××、凄い顔をしている。
多分××のパパの方も。
『嘘を見抜く力…では、何故斬撃が当たらない!』
もう一寸、耳が痛い小さな声で話してくれないかなーと思う。
『答えろ!!』
「「!?」」
そう叫んだ声の音量が、私が望んだ通りに小さくなる。
此の1年半で判った事。
「私の能力は―――」
静寂が走る。
今まで優しくしてくれていた××と対峙しているのに心はどこか落ち着きを保っていた。
一呼吸おいて言う。
「在るのに無いもの、無いのに在るものを自由自在に操る。」
シーン………――。
あれ?
何で?
知りたかったんじゃなかったの?
そんな風に思っているとスピーカーから声が出てくる。
『……なんだそれは。巫山戯てるのか?』
音量が小さいから威圧感は無いけど、怒ってはいるみたい。
でもその内容にムカッとする。
「教えてあげたのに。」
スピーカー、否。
××のパパと会話している隙に××が大きく腕を数回振り下ろしたみたい。
スピーカーを見てたから気付かなかったけど。
そんな不意討ち攻撃でも、斬撃は私の前で止まる。
……見えてないけど。
「なっ!?」
「返すよ、これ。」
私がそう言うと、斬撃は通ってきた軌道に乗って元の位置に返る。
其れはつまり―――
「わぁああああ!!」
『××!』
××に大きな切り傷が入るが、死に至る程じゃない。
こうでもしないと事態が収集しない。
御免ね、と心で呟き、そして溜め息を1つ付くとマジックミラーと思われる壁に近付き、触れた。
「異能力―――『ワンダーランド』!」
何も映していなかった壁がハッキリと向こう側を写し出した。
皆、が驚愕した表情で見てる。
私は壁沿いを歩いて、マイクの前に立っているだろう××のパパを見つけ出して目の前に立ち止まった。
「もうやめて?でないと前みたいに此処に居る人全員殺しちゃうかもよ?」
首を傾げながら無邪気に言ってみせた。
勿論、殺す気なんて全く無い。
けど、私には前例がある。
……自分の意思でしたことではなかったけど。
大人たちが恐怖を抱くには十分だと思った。