第14章 自覚(太宰side)
中也はアリスの演技にもだが、笑い掛けられて顔を赤らめる男にも呆れている。
「こっ…此処だ。食事は食堂で…此処の突き当たりにある。入浴は各自、部屋のシャワーで済ませてくれ。始業や食堂の時間等は部屋にあるしおりを読んでくれ。」
「判りましたー。有難うございます。」
ペコリと一礼して、またニッコリ笑って見せるアリス。
「ほっ…他に困ったことがあれば何時でも云ってくれ。お…私の部屋は、此処の一番右端だ。」
「あ、そうなんですね。何かあればお邪魔します。」
「ああっ…!」
そう言い終わると二人は部屋に入る。
大した演技だな。
呆れながら扉を閉める中也。
「あ。ベッドが1つしかないー。」
「手前ェが一緒の部屋が善いって言ったからだろうが。」
「だってー。襲われたら如何するの?」
「殺せ。」
「やだよ、面倒臭い。」
そう言いながら男が云っていたしおりに目を通し始めるアリス。
中也がアリスの向かいに座る。
「んで?俺が此所に呼ばれた理由は何なんだよ。」
「んー。一寸長くなるからご飯食べてからにする。」
「はあ。お前といい太宰といい肝心な事は後回しだな。」
うんざりした顔をしてみせる。
しかし、アリスには何の嫌みにもなっていない。
「私にとっては中也兄に説明することより、ご飯の方が大事なんだもん。」
「そーかい。」
「もうっ!髪が乱れちゃう!」
乱暴に頭を撫でる中也に不満を言うアリスに対し、雑な扱いを受けた腹癒せを終えてニヤリと笑う中也。そうして直ぐに二人は食堂へ向かった。
―――
「ご飯っ♪」
「お前は何時でも愉しそうだな。」
呆れながらアリスと向かい合うように座る中也。そして、運んできたお盆を机にのせる。
メニューは固定で、白米と味噌汁。メインの焼き魚に小鉢、デザートにフルーツまで付いた極々普通の定食。
「いただきまーす。」
お行儀よく手を合わせて食事を始めるアリス。
中也も少し遅れて食べ始めた時、隣の席に他の連中が座ってくる。
「お嬢ちゃんも此処でバイトか?よく一週間も住み込みでなんて聞いた感じ怪しいバイトを親が許したなあ?」
「あ、お兄ちゃんと一緒だから。ね、お兄ちゃん?」
「あ?お兄ちゃん?」
「…何だよ。」
黙って食事する中也を見る。