第14章 自覚(太宰side)
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『今日は此れで終了だ。各自、部屋に戻る様に!』
男が拡声器を使用して叫ぶと、アリスと中也以外の連中が「お疲れ様でした」と言いながら立ち去る。
その様子を見送って、ポツリとアリスが呟く。
「何?全寮制みたいな発言だったけど。」
「みたいじゃなくて全寮制だ。」
「「!」」
中也に話しかけた積もりだったが、返答は目の前からやって来た。
「お前たちの部屋は此方だ。付いてこい。」
拡声器を持って高台で見ていた男が目の前に現れて言う。
「あのー。」
「何だ?」
「私、全寮制って知らなかったんですけどー。」
「帰っても良いが、一週間が期限だから給料が支払われないが。」
「あ、それは困ります。帰りたいとかじゃなくて…見た感じ、男の人ばかりだから独りだと怖いんです。『ナカヤ』お兄ちゃんと一緒のお部屋にしてもらえませんか?」
「……。」
少し怯えるように中也の服の袖を掴んで上目遣いで男の方を見るアリス。
その行動を黙って見ている中也。
「ああ。そういうことか。構わないさ。此方としても部屋が1つ浮くから有難い。」
「わあ!有難うございますっ!お兄ちゃん!一緒で良いって!」
「あー。良かったなー。」
「っ!」
ニッコリ笑って男にお礼を告げると中也に飛び付くアリス。
その笑顔に男は顔を赤らめる。