第14章 自覚(太宰side)
「興味深いね。『目に見えない存在するモノ』を操る能力ではなかったのかい?」
「根本的なモノは変わらないよ。『影』も操れるし、嘘だって直ぐ判る。でもその中でも私に根付いているモノに気付いたんだよ。」
「ヘェ。それは?」
太宰の問に暫く黙り、前を向いたまま小さい声で答える。
「『時間』」
「時間?」
「そう。私への攻撃を時間を止めて防いでたみたいなんだよ。銃弾なんて良い例。てっきり言葉を操れてるのかと思ったけど違ったみたい。」
「ふーん。」
確かに、言葉を操れるなら何だって出来るだろう。
極端に云えば『死ね』と告げれば相手を死なせる事が出来る筈だ。
しかし、アリスがその様に告げて何かを操っているところなど見たことがない。
そこまでは万能では無いと云うことか。
充分すぎる異能力ではあるが―――。
「で?何でその事に気付いたんだい?」
「……。」
「?」
アリスが完全に黙り込む。「時間」と告げた時も様子が可笑しかったが。
アリスが話し出すまで黙って待つ事にした太宰。
暫く無言で歩いていると漸くアリスが口を開く。
「治兄の『人間失格』の厄介なところってある?」
「私の?異能力無効化に例外は無いから万能ではあるけれど。強いて云えば触れていないと発動しない点かな。」
「そう。危険と云えば危険だね。」
「そうだね。」
それがどうかしたかい?
そう訊ねようとした。
「私はね。」
その前にアリスが言葉を続ける。
「自分の時間を対価に『在るのに無いモノ、無いのに在るモノ』を操る異能力者だったんだよ。」
「!?」
太宰の歩みが止まる。それに気づいたアリスも数歩先で止まった。
「治兄?どうかした?」
「それは……力を使うとアリスの時間が減ると云うことかい?」
寿命を対価に力を行使していたのか。
深刻そうな顔して言われ、アリスは誤解が生じていることに気付く。
「ああ…違うよ。私は其方の方が良かったんだけどね。」
ニコッと笑って答えるアリス。その言葉にピクリと反応する。
「……本気で云っているのかい?」
「…?違うってことを?それとも寿命を対価にしていた方が良かったって思ってることを?」
「勿論、両方だよ。」
太宰の声が何時もよりワントーン下がった。