第14章 自覚(太宰side)
「治兄、具合悪いなら少しは休まないと何時もより頭の回転が遅いよ。」
「ははっ。今、思い知ったよ。で、如何いうことだい?」
「***を残しておいてって云ったでしょ?」
「ああ―……成程。そういうことか。」
アリスの側に寄り、髪に触れる。
「アリスが私の事をそんなに大事に思っていたなんて。」
「いや、そんなに思ってない。ケーキ代だよ。」
プイッと外方向くと、そのまま後ろから抱きすくめる太宰。
「矢っ張り気付いてなかったんだね。」
「ああ。」
「***が最近になって色々な組織を挑発している理由は、武装力が上がったからって専らの噂だよ。」
「私達のだけでなく他の連中の荷物も横取りしているわけか。」
「そ。武器以外は金に換えて資金調達。他の組織の手に届くものが全部***の元に行くんだもの。調子に乗る理由が判ったでしょ?」
「今やっとね。正直、さっきまでは全く。」
「それが異常なんだよ治兄。此れに懲りたら今度からは早めに休むんだよ。」
「そうするよ。」
苦笑しながらアリスを解放すると、二人で入り口の方へ向かう。
「やれやれ。***を拷問に掛ける準備もしておかないと。」
「……確信は無いんだけど***は『パラサイト』に冒されてるかもしれない。急にこんな事を思い付いて、行動出来る筈がないと私は思ってる。」
「『パラサイト』ね。可能性としては有るだろうけど…。未だに目的がハッキリしない。内側から攻めて何処に行き着くか…。」
「うーん。今のところマフィアや大手企業にしか手を出してないみたいなんだよね。裏世界を牛耳りたいのかな…。」
エレベーターに乗り込み考え込む二人。
「まあ、其方はもう少し泳がせておくさ。」
「そうだね。」
チンッと云う音と共に、扉が開く。
そのまま、フロントの前を何事もなく通り過ぎ、ホテルから出た二人。
「私はともかく、アリスは流石に呼び止められるかと思ったけれど。」
「あはは。フロントの人達が私に気付くなんて不可能だよ。」
「!未だ出来ることを隠してるの?」
「別に隠してなんてないよ。『気配』を操作しただけ。」
「……君は本当に何でもアリだね。」
「そうかな?でも、最近になって自分の力の認識が誤ってる事とかが判り始めたんだよね。」