第14章 自覚(太宰side)
「もう!いきなり何するの!」
「薬は要らない。少し休ませて。」
「それはいいけど!休むのに私は関係無いでしょ!」
太宰の腕の中でバタバタ動くも、力で勝てるわけ無くそのまま担ぎ上げられるアリス。
向かう先は勿論ベッドだ。
「一時間経ったら起こして。」
「……この体勢だと一緒に寝ちゃう可能性が高いから解放を要求します。」
「ふふふ。それなら絶対に解放しないよ。私としては一時間でなくても構わないからね。」
太宰の言葉にムッとしていると直ぐに寝息が聞こえてきたため反論も抵抗も止めて大人しくする。
「矢っ張り熱い。」
ポツリと呟いた言葉に返事はない。
「今から大仕事って云うのに休まずに体調崩したまま行くとこだったなんて自殺行為……あ、治兄にとっては本望か。」
抱き締められてハッキリと判った太宰の体調不良に呆れながら、本日最後の溜め息を着いてアリスも目を閉じた。
―――
「!」
突然、意識が浮上して勢いよく身体を起こす太宰。
寝る前まで太陽が照らしていた世界は、今や静寂を司る月が支配している様だ。
一体、どれ程眠っていただろうか。
「……具合どう?」
「!」
隣から声を掛けられてハッとする。
自分で隣に置いておいたのに完全に少女の存在を忘れていたのだ。
少し仮眠を取るだけの積もりだった。
それなのに熟睡するなんて――。
「まだ具合悪いなら薬くらい飲んだ方が良いよ?其処に置いてるから。」
「いや……必要ないよ。有難う。」
「それなら良いけど……。」
直ぐに返事が無かったから未だ具合悪いのかと思った、等とぼやきながら少女はベッドから抜け出て明かりを付けに行く。
「いま何時だい?」
「日付が変わって間もないくらいだよ。」
「!」
身仕度していた手が思わず止まる。
「あ、電話がいっぱい鳴ってて五月蝿かったから切っちゃったよ。」
「……そう。」
「?まずかった?」
「いや。」
電話がどうよりも、8時間近く寝ていたことを未だに驚いている太宰。
アリスも髪を結び直したりと、出掛ける支度をしている様子に気付き、漸く意識が此方側に戻ってくる。
「アリスも出るのかい?」
「うん。荷物の横流しには心当たりが有るからね。」
「え。」
鏡で姿を確認して太宰の方を向く。