第14章 自覚(太宰side)
太宰が目の前の紅茶に手を伸ばすと、ケーキを頬張って話を聞いていたアリスが代わって話し出す。
「……『ポートマフィアは荷物を諦めた』と見せかけた方が、相手は安心して次の行動に出る可能性が高まり、捜査を外注することで更に確率を上げる心算か。」
「何時も通り、理解が早くて助かるよ。」
「………。」
太宰がニッコリ笑って告げるとアリスは少し考えるように黙り込む。
「……鎮圧する小競合いって***が関わってる?」
「!」
「…矢っ張りそうか。」
暫くの静寂の後に口を開いたアリスの言葉に、小さく反応する太宰。その反応を見落とすこと無く確認したアリスは嫌そうな顔をする。
「驚いたね。アリスの口から***って出るなんて。」
「………。最近、色々な組織を挑発しているみたいだからね。」
「へぇー。」
「本当は物凄く厭なんだけど…でも、条件が2つ。」
「飲むよ。何?」
「……聞く前に飲むって……。」
本日、何度目か判らない呆れ顔を造るアリス。
「勿論、他の取引の時はこうではないよ?」
「そりゃそうだ。天下のポートマフィアの幹部が何でも条件を飲むなんて判ってたら他の組織からの襲撃が絶えなくなるよ。」
はははっと笑う太宰にこれまた何度目か判らない溜め息を着く。
「***を全滅させないで欲しいんだ。」
「…………。もう1つは?」
「そこそこ動ける人を貸して欲しいんだよ。一人か二人。」
「後者は何時でも用意できるよ。問題は前者だ。」
「だから話を聞く前に飲むなんて云わなきゃ良かったのに。」
「別に残しておくのは構わないよ。ただ、ポートマフィアに歯向かわない者を選る事が大変だと思っただけ。」
「……矢っ張り判ってないね。」
「………?」
アリスの言葉に疑問を持ちつつ、ふぅ、と息を吐きながから額に手を当てる太宰。その太宰に向かって手を伸ばすアリス。
「?何だい?」
「……具合、悪いでしょ。何時もの調子じゃない。」
そういうと自分の手を太宰の額に乗せた。
「矢っ張り……熱あるでしょ。待ってて。確か何処かに解熱剤がっ!」
熱の確認を終えてソファから立ち上がろうとしたアリスの手を掴み、自分の方へ引き寄せる太宰。