第14章 自覚(太宰side)
処代わってアリスの滞在している部屋――。
とても子供一人が泊まる処とは思えない一室に二人は居た。
先程まで居たカフェで、太宰に買って貰ったケーキを皿に並べて紅茶を注ぐ。
ティータイムの続きをするべく準備をしているアリスに、先にソファに座った太宰が声を掛ける。
「相変わらず良い部屋に泊まっているね。」
「普通の部屋に泊まるよりは高い部屋でないとヒトの出入りが激しすぎて五月蠅いんだよ。でも高い部屋だと、それはそれで会いたくない連中と遭遇する確率が上がる。」
「成程ね。政治家とかが利用しそうなVIPルームがある。」
ホテルの案内に目を通しながらアリスが中間層の客室を利用している理由に納得する。
「それで?」
「ん?」
紅茶をテーブルに置いて、太宰の隣に座りながら本題に入るアリス。
「荷物探し。中身は?」
「ああ。銃器だよ。」
サラリと云われた言葉に、アリスの眉がピクリと上がる。
「また物騒な依頼を持ってくるね…。まあ普通の荷物なワケ無いとは思っていたけど……。」
はぁ、と態とらしく溜め息を着いてみせる。
「本当は依頼する積もりなど無かったのだけどね。困ったことに東部で小競合いが生じてしまってね。その始末をも任されてしまったのだよ。」
「ふーん。幹部様も大変だねぇ。」
「本当に。面倒ばかり増えて、ゆっくり休むことも中々出来ない。」
やれやれと今度は太宰が溜め息を着く。
「高くつくよ?」
「構わないよ。アリスの言い値で。」
「じゃあ治兄の全財産。」
「判った。」
「……。」
何一つ嘘が混じらない太宰の言葉に呆れ顔をするアリス。
「如何かしたかい?呆れた様な顔をしているけれど。」
「その通りだよ。呆れてるの。」
「何故?」
「こんな小娘に全財産はたかなくても、部下にお小遣いでもあげて、血眼で探させた方がよっぽど安上がりでいいと思うけど。」
「先刻も言ったけど小競合いの片付けを頼まれているからね。どうしても其方に人員を割かざるを得ない。それに、『私』が心当たりを中って見付けられなかったものを部下が簡単に見つけられるとは思えない。」
「それはそうだろうけど。」
「もう少し深く掘っても良かったのだがね。」