第14章 自覚(太宰side)
「ねぇねぇ中也兄。」
「……なんだよ。」
「私、何でこんな事させられてるの?」
「知らねぇ。太宰の糞野郎に聞け。」
「否、中也兄は解るんだよ。どうせまた懲りずに治兄に嫌がらせしたんでしょ?」
「……。」
「あ、図星なんだ。本当に懲りないねー。」
「うるせぇ!」
『五月蝿いぞ、其処!口を動かす暇があれば手を動かせ!!』
「「チッ。」」
二人の少し離れた視線の先の、少し高い位置から拡声器を使用して男が叫ぶ。その声に舌打ちして自分達が座っている机の上にある、大量の部品の山に向き直る。
螺程の小ささの物から鍵ほどの大きさの物まで様々な大きさと形をしている部品の中から、『見本』と同じ数種類の部品を探し出して、一纏めにしする作業を続ける。
「「何で私(俺)がこんなことしなきゃいけないの(ならねーんだよ)」」
―――
「チッ!もう四時過ぎじゃねーか!」
腕の時計の針が指す数字を見て、苛立ちを募らせる中也。
「彼奴が仕事押し付けたせいで昼飯食いっぱぐれた。何か仕返ししねーと気がすまねェ……ん?」
イライラしながら普段太宰が使用している机の上を見るとコンビニの袋が1つ。
中に入っているのはカニ缶が3つ。太宰の好物だ。
それを見てニヤリと笑う中也。
「丁度良かった。食うか。」
―――
「無くなった荷物を探してほしい?」
「そう。1週間前に届く筈だったのだけどね。」
「ちゃんと探したの?」
「勿論だとも。心当たりは総て中った。しかし」
「見付からなかった、と。」
太宰が現在、訪れている場所は豪華なシャンデリアが飾られたロビーで有名なホテル。
様々な施設が入っており、何不自由無く過ごせる所謂、高級ホテルだ。
その中の施設の1つであるカフェで優雅にティータイムをしていた人物に仕事を依頼する為にやってきたのだ。
紅茶を飲みながら太宰の依頼を聞いた少女、アリスはカップを置いて太宰の方を見る。
「引き受けてくれないだろうか?」
「………荷物の中身にも依るけど……取り敢えず、場所変えた方が良さげだね。」
アリスは目の前に現れた太宰にそう告げると、一気に紅茶を飲み干した。