第13章 買い物
「泡吹いちゃった。」
「肝が小さい男だね。」
口から泡を吐きながら気絶した男を見ていると、複数の足音が近づいて来ることに気付く二人。
「軍警が駆け付けたようだね。」
「関わりたくない。」
扉の方を向きながら太宰が云うとアリスがポツリと呟く。
「!」
その呟きをしっかり聴いた太宰がヒョイとアリスを抱える。
「休むと良い。疲れただろう?」
「…怒ってない?」
「怒ってないよ。」
そっか…と消え入るような小声で云うと直ぐに眠ってしまうアリス。
「消耗が激しい様だね。」
アリスの頭を一撫でして、太宰は外へと歩き始めた。
―――
「じゃあアリスは初めッからポートマフィアが絡んでた事を識ッていたのかい?」
全てが片付いて帰社した頃には日付が変わってから一時間以上が過ぎていた。
敦は鏡花を背負って谷崎と共に先に帰宅し、与謝野、国木田、太宰、そして眠っているアリスはソファに座ってお茶を飲みながら話している。
「ええ。ただ、今回の件に関わってるか迄は確信できなかった。だから電話したんでしょうね。」
「傘下組織と云うわけでは無さそうだな。」
「◆◆◆は昔、ポートマフィアを利用しようと企てて返り討ちにあってる。それ以降、情報提供をし続けていた、只の捨て駒。」
「それで利用できるネタが上がれば利用してたって訳か。しかし、太宰。矢張り損失が大きい事には代わり無い筈だ。見返りも無しにアリスの電話一本で身を引くなんて事あるのか?此れをネタに今度はアリスに何かあるのでは!?」
「無いよ。」
「何故そう言い切れる?」
カップを置いて、太宰はアリスの頭を撫でる。
「◆◆◆がポートマフィアを利用しようとしているという情報提供をしたのがアリスなんですよ。」
「「!?」」
「こんな風に、アリスはちょいちょい他組織の報復や因業から、ポートマフィアを救っている。その情報が無かった場合に想定できる損害は、あまりにも巨大。ポートマフィア自体、とっくに存在していないかもしれない。」
「そんなにか……。」
驚きを隠せない二人。