第13章 買い物
「優秀な情報屋だったのだよアリスは。だからポートマフィアにとって◆◆◆が消えても●○を強請れなくなってもアリスがもたらした功績に比べれば大したことではない。それよりも敵対して出る損失の方が高くつく。」
「成程ねェ。『妾が思ってたより良い子じゃない』ってこのことか。」
「そんなこと言ってましたか。」
苦笑しながらアリスを見る。
「そんなこと、微塵にも思ったりはしないッて云うのに……嘘まで付かせてしまったねェ。」
「いや、『マフィアが関わってる』って言うのを黙ってたのは鏡花ちゃんが居たからですよ。まだあの娘の中では燻っているでしょうからね。」
「!」
太宰の言葉にハッとする与謝野。
確かに鏡花は探偵社に入ったばかりだ。
不安定な部分も多い。
「あとは一応、一緒に居た娘達にも配慮した結果かと。」
「「………。」」
「?」
その場に一緒に居た与謝野よりも、居なかった太宰の方がアリスの心情を観ていたかのように説明する。
「太宰。」
「なんだい?」
「お前、それだけアリスのこと判っておきながら何故、喧嘩が絶えないんだ?」
「んー。それとこれとは別問題なのだよ。否、一緒か。」
「なンだい?そりゃあ。」
「アリスの事を誰よりも良く知っているからこそ、私だけで在りたいのだよ。」
「はあ?」
「要は独占欲が強いんだろう?」
「そういうこと。」
呆れ眼で太宰を見る国木田に、与謝野が笑いながら解説する。
「あんまりしつこいと嫌われるぞ。」
「判っているとも。」
そう言うとアリスを抱え、席を立つ。
「それじゃあ私達も帰るとするよ。」
「社長に説明しておくからゆっくり休ませるんだぞ。」
「国木田君!何て優しいんだ!」
「アリスの話だ。お前は定刻に出社しろ。」
ピシャリと言い放つ国木田にちぇーっと云いながら太宰は探偵社を後にした。
「ふぁー。妾もそろそろ眠い。」
「お疲れ様でした。ゆっくり休んで下さい。」
「次から買い出しには必ず男を連れていくことにするよ。」
「!」
ニヤリと笑う与謝野に対し、ビクッと反応する国木田。
その反応を見てクスクス笑ったあと与謝野も事務所を去った。
「当番制にしよう。」
国木田は誰にも聞こえないほどの声で呟いた。