第13章 買い物
「じゃあ急ぎましょう!なるべくボクから離れないようにして下さい。もし敵に遭っても声をたてないで。」
谷崎の説明を受け、全員がコクりと頷く。
「異能力―――『細雪』」
廊下に誰も居ない映像を上書きする。
谷崎を先頭に、集団は外へ向かって歩き出した。
―――
「待ってくっ…下さい!…話すっ……話しますからっ!」
「そう?最初から素直にそう云ってれば良かったのに。」
目の前にいる少女に怯え、泣きながら腰を抜かしている男。
周りには先刻まで威勢の良かった、仲間だった男達が血塗れで倒れている。
今のところ死んではいない……が。
この少女は何の躊躇いもなくこの状況を作り出した。
恐らく、殺すことすら平然とやってのけるであろう。
立って話を聞くのが面倒だったのか、近くにあった椅子を男の目の前まで運んできて、座る。
「それで?」
殺されることしか頭に無かったせいか、話し掛けられた声に過剰に反応する。
先程、与謝野と会話したリーダー格の男とは思えない程、情けない状態。
「何でそんなに怯えてるの?失礼しちゃう。貴方達が私を奴隷にしようとして連れてきたんでしょ?」
「その通りです。失礼しました。」
死と隣り合わせにあるため、姿勢を正し、土下座で謝罪する。
どう見ても年下の少女に敬語を使ってしまう程、この男は恐怖心で一杯だ。
「で?異国の男達も居たみたいだけど。」
「はい。今現在、日本人の奴隷が異国で高値で取引されているのです。」
「へぇー。何で?」
「他国よりは平和で、そこそこ健康状態も良い。」
「成程。臓器としては新鮮かつ健康が一番だもんね。」
「………仰る通りです。」
「それで?●○との関係は?」
「!な……な…何故それを………。」
「私、こう見えても顔が広いんだよ。だから彼方此方に知り合いがいてね。例えば…―――」
奴隷商としてだけではなく、臓器売買の顔も知っていた事にすら驚いたが、政治家と繋がっていることも既に周知していた少女が悪魔か何かに見えてきて、震え出す。
血が身体を巡るのを止めてしまっているかのように真っ青だ。
今から紡がれる言葉等、想像出来ない程に。
「ポートマフィアとか、ね。」
「!?」
ガチガチと奥歯が当たる音が響く程、震えが酷くなる。
その様子に溜め息を着き、目を細めるアリス。