第13章 買い物
「やれやれ。困ったものだね。」
通話終了の釦を押しながら大袈裟に溜め息を着く。
「相手がポートマフィアなんて…社長に報告した方が良いンじゃないですか?」
「いや、その必要はないよ。」
「え?」
太宰の発言に驚きを隠せない谷崎。
「先刻、アリスが電話で『◆◆◆に捕まったみたい』と言っていた。」
「◆◆◆ッて――…。あっちの界隈では有名な人身売買組織の名前じゃあないですか……。」
それよりも既に犯人組織まで割り出して電話してきていた事にツッコミを入れたかったが、思い留まって話を続ける事を選んだ谷崎。
「そう。◆◆◆はポートマフィアと繋がりがある。情報を数多く所有しているアリスがその事を知らないわけがないのだよ。」
「………。」
「恐らく、●○氏に対して◆◆◆が仕事の斡旋を行い、その取引のことをネタにポートマフィアが●○氏を利用しているのだろう。」
谷崎は複雑な顔をしている。
太宰の推測は簡単に想像が出来る程、納得のいくものであった。
この推測に疑問など、無い。
あるのは――
「でもその推測だと◆◆◆とポートマフィアは繋がりが有るッて事ですよね?そしたら矢っ張り◆◆◆の為に抵抗してくるンじゃないですか?取引相手のピンチじゃあないですか。」
ポートマフィアと抗争になるかもしれないという不安だ。
真剣な顔をして話す谷崎に太宰は苦笑して、口を開く。
「心配せずとも、ポートマフィアは既に手を引いているさ。リスクを負ってまで繋がっていたい組織ではないだろうからね。」
「リスク……ですか。」
「そう。」
「そのリスクって……」
おそるおそる太宰に訊ねる。
「アリスを敵に回すって事。」
「ですよね。」
アッサリと返事が返ってきて納得する。
「アリスはポートマフィアに迎えたい程の人物。故に繋がりを持っておきたい筈だ。◆◆◆など比では無いくらいにね。そうなると◆◆◆を切り捨てることは明白だ。」
「成程…。」
全ての疑問が解決する。
解決した瞬間、新たな疑問が生じてしまったが。
「ポートマフィアですら敵対を避けるなんて……アリスちゃんって今までどんな生活をしてたんですか?」
浮かんだ言葉を口にすると太宰がニッコリ笑って、言った。
「内緒。」