第13章 買い物
理由が判らずともアリスが不機嫌なのは明白。
その上、理由は判らずとも「ポートマフィア」と敵対する事を告げていた。
相手がどんな組織であろうと関係ない位、激昂しているということ。
即ち……
アリスは今、完全に臨戦態勢にある―――。
下手なこと聞いて神経を逆撫でしちまったら戦闘をおっ始めるかもしれない。そうしたら絶対に妾達じゃあ止めることは出来ない。
頭の中で思考を巡らせ、言葉を選びながらアリスと会話する与謝野。
鏡花も、他の連中も、何となくただならぬ空気を察知し、言葉を発することなく二人を見ている。
「場所を特定するために此処を彷徨いたんだけどね。貸倉庫とか廃ビルとか…想像していた場所なんかじゃ全然無かったんだよ。誘拐されて移動している間はずっと寝てたから気付かなかったんだ……。」
「車に乗せられた後、私達を積んでたコンテナごと此の部屋に運ばれたみたいだから。」
「そうだったんだ。道理で眠れた訳だ。」
鏡花の説明にうんうん、と頷きながら納得するアリス。
緊張感の欠片もない。
「それで?此処は何処なンだい?」
「大きなお屋敷。」
「「「!?」」」
質問の答えに驚きを隠せないアリス以外の人たち。
「家主らしい人間は居なかった事を踏まえて推測すると…此処は金持ちの別宅で、今は密売組織の根城ってとこかな。」
「……何でお金持ちって…大きいお屋敷ってだけでそう決めつけるのは偏見だよ。」
一人の女性がアリスに云い放つ。
「じゃあ聞くけど、貴女の大きなお屋敷には監視カメラっていっぱいある?」
「!どうして……私…大きい家に住んでるなんて一言も…。」
それに対して面倒臭そうに溜め息を着くアリス。
「晶姉。大きなお屋敷に住んでる人ってどんなイメージ?」
「そうだねェ…矢張り金持ちのイメージが一番強いねェ。」
「貴女は?」
「私もそうです。」
「貴女は?」
「私も。狭いアパート暮らしだから。」
「鏡花ちゃんは?」
「私も…一軒家でもそう思う。」
与謝野を始め、近くにいる女性に同じ質問をした後で元の女性に向き直る。