第13章 買い物
「違うよ。此れでこの間貸した分を返してよ。部下の不手際は上司が責任とるのが常識でしょ?」
『……チッ。』
「この間の貸し……?」
「シッ。今は黙って聴くんだよ。」
耳をそばだてる与謝野に黙るように指示を受け、鏡花はコクリと頷く。
一生懸命に二人のやり取りを聞いてはいるものの、相手の声は全く聴こえない――が。
「!アリスちゃんの表情が…。」
「ああ。嫌な予感がするね。」
『矢っ張りか。有難う中也兄。』
「太宰が来るまでお前は大人しくしとけよ。」
『ははは…。難しい事言うねー。まぁ今は大人しくしとくよ。でもその後は知らない。手を引くなら今の内だよ?私は売られた喧嘩はキッチリ買って、完全に反抗できなくなるまで打ちのめす主義だから。これも知ってると思うけどね。』
「はぁ。●○の野郎、依りに依ってアリスに手を出しやがって」
『仕方ないよ。私を拐ったのは◆◆◆の連中だし。』
「…首領に報告する。直ぐに●○から手を引く指示が出るだろうよ。どうせ只の操り人形だったからな。代わりは幾らでも居る。」
『そう?まぁ賢明な判断だと思うけどね。んじゃあ森さんに報告したら結果教えてねー。』
「判ってるよ。何度も云うがお前はまだ動くなよ。」
『努力する。』
ピッと通話終了の釦を押す。
「約束守る気ねーな…あいつ。」
「女の人の声が微かに聴こえたんですが彼女さんですか?」
通話を切った電話を眺めながら呟く中也。
「手前ェの姉だよ。ホント敵に回ると厄介な奴だぜ。」
「姉さんが中也さんに!?一体何の用だったんですか!?」
「秘密だ。」
電話相手を告げた瞬間、間合いを一気に詰めて問い掛けるアキト。
「俺は首領に用が出来たから行ってくる。お前はこのまま続きしてろ。」
「…分かりました。」
中也はアキトに手短に指示を出すと部屋を出ていった。
―――
「アリス。」
「ん?なあに晶姉?」
電話を仕舞って溜め息を着くアリスに与謝野が話し掛ける。
「何があったンだい?戻ってきてから様子が可笑しいよ。」
「…そうかな?」
聴きたいことは山のようにあった。
5分そこそこで、誘拐組織を割り出せた理由
面倒な案件と云った理由
ポートマフィアの幹部に連絡をとった理由
然し、其れを直接的に聞くことは避けた。