第13章 買い物
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ガチャッという音にビクッと反応し、扉の方を向く女性たち。
強張った表情をしていたが、入ってきた人間が自分達を拐ったものでは無いと判り、ホッとする。
然し、入ってきた少女の表情は険しい。
と、云うよりも―――
「おかえり。ン?如何したンだい?そんな顰めッ面なンかしてさ。」
「……思ってたより不愉快な案件だった。」
ムスッとしながら与謝野の隣に座る。
「不愉快?」
「そう。」
鏡花の声に応じ、再び携帯電話を取り出し電話を掛け始める。
太宰に掛けるのか。
そう思いながらフゥと一息つく与謝野。
「あ、もしもし?中也兄?」
「「!?」」
アリスの口から出た名前に思わず立ち上がる程に驚く与謝野。
「今何時だとって…まだ日付け変わる前じゃん。中也兄にとっては今からが活動時間でしょ?え?私の方?」
会話は日常的な挨拶から始まり、大した内容は話してない。
どうやら相手は遅くに電話を活動していることについて説教しているようだ。
一言一句聞き逃さないように注意深くその会話に耳を済ませる。
「判ったってば。そんなに説教は要らないよ……。で、用件なんだけど。」
与謝野がピクリと反応する。
「密売組織◆◆◆の人身売買の情報が欲しいんだよ。何か知らない?」
「もう組織名まで知ってンのかい…本当に畏れ入るね。」
ボソリと呟く与謝野の言葉に返事はない。
アリスは聞きたいことをダイレクトに相手に訊ねている。
しかし、すんなり教えてくれる筈などない。
相手はマフィアの中でも残忍非道な組織ポートマフィアの一員。
そして尚且つ、その組織の幹部をやっている人間だ。
『……何でそんな事聞くんだよ。』
「いやー。今まさに売られる一歩手前なんだよ。だから助けて?」
『はあ?お前がか?……冗談だろ。』
「え?何で?私だって女の子なんだけど。」
『否、そんなこたぁ知ってる。聞きたいことはそれじゃねーこと位判ってんだろうが。』
「一寸楽しんでた時に捕まっちゃったからね。抵抗するのが面倒だったんだよ。」
『……青鯖は一緒じゃねーのかよ。』
「治兄が一緒の時に中也兄に電話なんて掛けられる訳ないでしょ。知ってると思うけど。」
『………はぁ。貸しだからな。』
ため息をハッキリとスピーカーが拾っているようだ。