第2章 夢主
××の表情は見えない。
けど声が泣いているような気がする。
そういえば、大人たちの呼び出しから戻ってきた時から元気が無かった。
「大人たちに何か言われたの??」
「!」
顔を上げて、此方をみる。
「……否、なんでもな「嘘でしょ。」」
目を見開いて、私を見る。
「アリスには嘘は通じないんだったね。」
苦笑しながらぽんぽん、と頭を撫でる。
「色々判った事があったんだよ。」
「……そっか。」
これ以上は聞いちゃいけない。
何となくそう思って口をつぐんだ。
すると、突然。
「俺の異能力は、振りかざした手の大きさと同じ斬撃を出すこと。指を少し振れば小さな斬撃。大きく腕を振ると大きな斬撃。」
「そうなんだ!」
「アリスは自分の異能力についてちゃんと解るようになったか?」
「うーんと、私の力は「言わなくていいよ。」え?」
「ちゃんと理解出来たならいい。自分だけ判ってればいいことなんだよ。他人に知られると利用される可能性もある。」
「…。」
「助かっても今みたいに利用されるかもしれない。」
「此処を出る日なんて来るのかな?」
「来るさ、必ず!」
またぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「私はお兄ちゃんとか居なかったけど××みたいなお兄ちゃんが欲しかったなー。」
「!」
××のお陰で、此の生活も頑張ろうと思えたから。
そんなこと思ってると××が急に私を抱き締める。
「わぁ!苦しいよ、××!」
それでも離さない。耳元で啜り泣く声がする。
「御免。御免な、アリス」
「何で謝るの??如何かしたの??」
泣いてる××に驚いてオロオロする。
「………突然泣き出しちゃって御免って意味だよ。」
私を離して、涙を拭いながら言う。
「さあ、もう寝よう。」
「…うん。」
『嘘』だ。
××は何か隠している。
でも、私は聞き返したりはしなかった。
××が私に初めて付いた嘘だったから。
何か理由があるのかもしれない―――。
そう考えて私も布団に入った。
御免の本当の意味は、明日知ることになる――。