第13章 買い物
そんな時だった。
『………五月蠅い。』
与謝野の隣に居た少女の目が開くと同時に、静寂が訪れる。
「もう少し寝たかったのに…。」
「アリス……起こしちまッたね。」
「ごめんなさい。」
ムスッとするアリスに二人が声を掛ける。
「別に二人のせいじゃないよ。」
ふぁーと1つ欠伸をしてそう云うと目線を女達に移して睨み付ける。
「―!――?!」
「―――!」
必死に手や、大きく口を開ける女達。
「「?」」
口を動かして何かを叫んでいるようだが全く音になっていない。
その光景を不思議そうに観る与謝野と鏡花。
「人のせいにしたり、泣き叫んだりして何が解決するわけ?馬鹿みたい。」
「「!」」
アリスの言葉に女達の表情が歪む。
「そんな無意味で下らない行動のせいで私の眠りを妨げた罪は重いよ。」
冷たく言い放つアリスを見て、
女達が急に『声』を発する事が出来なくなった原因を理解する二人。
その事を突っ込むか悩んだ与謝野だったが、全く触れずにアリスに状況説明をする。
「時間が余り無い様なンだよ。」
「そうなの?」
女達の対応と全く違う、何時ものアリスに心の中で安堵しつつ寝ていた間の事を説明をする。
「明朝5時に何かするらしいンだ。今が何時か判ンないけど兎に角、時間が無い。」
「うーん。今は未だ11時前だよ。正確に言えば48分。」
「判るのかい!?」
アリスの発言に全員が周囲を見渡す。
時計を探しているようだ。
「時計なんて私には必要無いからね。最近知ったんだけど」
クスクス笑いながら告げると、アリスの手足から拘束具が何事もなかったように外れる。
「「「……え?」」」
衝撃の光景を目の当たりにし、全員がアリスに視線を集める。
注目を集めた当人は、そんなこと如何でも良さそうにポケットから携帯電話を取り出す。
「何で…携帯電話なんか持ってるの……?此処に来た時点で取り上げられた筈じゃ……」
先刻まで泣き叫んでいた女の一人が、呟くように言う。
声が戻ったよう……否。
大声だけ消されているようだ。
他の女が「何故!?」と叫ぶように大きく口を動かしている声は他の人たちには届かない。