第13章 買い物
「アリス…何時の間に取り返したンだい?」
「抑も渡してないんだよ。隠すのは得意なんだ。」
「ホントに恐れ入るよ…アンタッて子は。でも此処まで拘束設備が整ッていて警察も見付けられないときたら妨害電波を発してる筈さ。」
与謝野が深刻な面持ちでそう告げるもアリスは笑顔を崩さずに携帯電話を耳に当てる。
「『時間』にしたって『電波』にしたって『鍵』の付いた拘束具にしたって、私にとっては無意味なものだよ。あ、治兄?」
「「!」」
相手が出たようで、会話を始めるアリス。
然し、様子はおかしい。
「だ~か~ら!晶姉と鏡花ちゃんと一緒だってば!」
「?」
電話に向かって声を荒らげるアリスを不思議そうに眺めるその他全員。
するとアリスは携帯電話を与謝野に渡す。
「晶姉……治兄が心配してくれない。」
アリスがムスッとしながら云うと、苦笑しながらその電話を受け取る。
「アリスちゃん…大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ。治兄なんかもう知らないもんっ。このまま帰るの止めて、違うところに行方をくらまして――」
「ほらアリス。太宰が代わって欲しいッてさ。」
「……。」
電話を渡すと与謝野は苦笑しながらアリスが話始めるのを見る。
そして、それを心配そうに見ている鏡花に気付いて拘束された手を鏡花の頭に乗せる。
「喧嘩してたンだッてさ。」
「そうだったんだね。早く仲直り出来たら良いな。」
「大丈夫さ。喧嘩の最中でも、アリスが電話を掛けて助けを求めた相手は太宰だったンだから。」
「――判った…。また後でね。」
与謝野の云う通り、ピッと電源を切る頃にはアリスの顔に怒りの色は無くなっていた。
それどころか少し嬉しそうだ。
「ね?」
「うん。良かった。」
「??」
二人のやり取りに首を傾げる。
「で。太宰は何て?」
「取り敢えずこの場を特定することから始めるように云われたから一寸出掛けてくるよ。」
「待ちな。アリス独りで行くつもりかい?」
「?うん。勿論だよ?晶姉、その手足で如何やって動くつもりなの?」
「外してくれたら良いだろう!?相手は異国の言葉を話してた!マフィアが絡んでるかもしれないンだよ!?」
「……異国の言葉……?」