第12章 意図的な再会
おぎゃーおぎゃー
「!」
赤ちゃんの泣き声。ソファから?
「わぁ!可愛い……!」
ちっちゃい手を一生懸命動かしながらめいいっぱい泣いている。
初めて見る、私の弟。
「よしよし…泣かないで…。」
頭を撫でてやると直ぐに泣き止み、言葉のような何かを云う。
「抱っこかな?」
思ってたよりも重い!
よいしょ、と掛け声を掛けて抱っこすると嬉しそうに笑う赤ちゃん。
「アキトーお姉ちゃんだよ……って云っても判んないよね。」
さて、これから如何しようかな。
取り敢えず火事に偽装する心算だったけど…この子の事まで考えてなかった。
台所のコンロの火を点けて、うーんと考えているとアキトが腕を伸ばしてその火を触ろうとする。
「わーー!!アキト駄目だよ!」
慌てて手を掴もうとすると、コンロの火が急に強くなる。
「!」
アキトは私と遊んでる積もりなのかキャイキャイ笑いながら腕をバタバタさせる。
その腕の動きに合わせてコンロの火も動いていることに気付く。
「アキト……一寸だけゴメンね?」
袖から腕を抜いて、その袖部分をその火の中に入れてみる。
燃えない――
「矢っ張り。アキトの異能力は火を操れるんだ……」
私はコンロに揚げ物用の鍋に並々油を注いで放置して2階へと上がる。
替わってなければ一番奥が二人の寝室だった筈。
ドアを開けて中を確認して其処にアキトを寝かせる。
寝かせてみたけど、もし、発見が遅くてお家が倒れちゃったら……
「矢張っり、リビングの方が早く見つけて貰えるかな……。」
思い直してアキトを抱え直してリビングに戻ることにした。
最初に見付けたときと同じようにソファに寝せてからコンロの前に戻って火に手を翳す。
火力が強まり、辺りを燃やし始める。
「先に此れを焼いとくかな。死因が特定されたら面倒だし。」
目の前に転がる人だったものに炎が覆い被さる。
それが焼けていく姿を見ても、涙ひとつ流れない。
おんぎゃー!
アキトの泣き声だけが私の耳に届く。
もう一度だけ。
アキトの顔を見て、頭を撫でてから此処を去ろう。
もう会うことは無いと思うから…。
「どうか、幸せに生きていけます様に。」