第12章 意図的な再会
―――
「聞いたって楽しくない御話しでしょう?」
「まあ楽しくはないね。しかし、話して貰えたのは嬉しいよ。」
1つの布団の中に一緒に入って話をしていた二人。
そろそろ日付が変わる頃だ。
「治兄。」
「なんだい?」
「私、あの人達を殺したときも、他の人達を殺したときも何にも感じなかったんだよ。」
「それがどうかしたのかい?」
「……きっと私も狂ってる。だからアキトに姉だなんて呼んで貰いたくない。」
「ふぅん。じゃあ私は?」
「?」
「私が過去にしてきた事、アリスが知らないわけないだろう?」
「……まぁ。それなりに知ってるけど。」
「どっちの方が狂ってる?」
「それは治兄の方だね。間違いないよ。」
「それでもアリスは私の事を『治兄』と呼ぶのだろう?私が狂ってる事を知っているのに、こうして一緒の布団で過ごす程、親しい仲でいる。」
「!」
「アリスは考えすぎだよ。アキト君がアリスを姉だと認識しているなら、それはそれで良いことだろう?アリスが兎や角云うことではないよ。」
「でもっ……。」
「全てを知ってアリスの事を姉と呼ぶかは判らない。けど、今は何を於いてもたった一人の姉に出会えて嬉しいんだ。そしてなにも知らないからこそ何でも知りたがる。当然のことさ。」
「……。」
アリスを抱き締める腕に力を込める太宰。
「取り乱すアリスも可愛いかったけれど、あんまり他の男の事ばかり考えるのは戴けないな。」
「……あれは弟。」
「男に変わり無いでしょ。私は嫉妬深いのだよ、知ってると思うけど。」
そう云うと口付ける太宰。
「おや。珍しく抵抗しないね?」
「……お望みならそうするけど……。」
太宰の胸に顔を隠すように埋めるアリス。
どうやら少しずつ何時もの調子に戻ってきている様だ。
その様子に太宰はフッと笑って、再びアリスに口付けた―――。