第12章 意図的な再会
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「それで?後、どれくらい燃える予定なんだい?」
「1つ。」
「そうか。まあ今夜中にはカタが付きそうだね。」
部屋に帰ると、寝ていた筈のアリスがお茶を飲みながら小さい声で太宰の質問に答える。
「あの後、何を話したの?」
「何も」
「嘘でしょ。」
「やれやれ。本当に厄介な力だ。まあアリスが言って欲しくないことは話したりしてないよ。」
「………本当に?」
「本当だとも。アキト君も異能力者って気付いた両親がアリス同様に売り物にしようとしていたから殺害に至った事とか、両親の死亡保険も含めた全財産をアキト君の名義で孤児院に寄付したのはアリスだった事とか、会いに来るかもしれない事を想定して弟が居ることも、ましてやマフィアに籍を置いていることを探偵社に黙っていた事とか。」
「一寸待った!何でそんなことまで知ってるの!?私、治兄に話した覚えなんかないけど!何で!?如何して?何時何処で!?」
湯飲みを乱暴に置いて太宰の胸倉を掴んで揺さぶるアリス。
そんなことお構いなしに、自分から胸に飛び込んできたアリスを好都合だと云わんばかりに抱きすくめる。
「落ち着き給えアリス。何処かで得た情報ではないよ。アリスの言動から推測したものだ。」
「じゃあ離して!もう一回言ってみせてよ!」
「やれやれ。こんなに取り乱すなんて本当に珍しい。」
ふぅ、と息を吐きながら自分の腕の中からアリスを解放し、先程と同様の台詞を述べる。
「ワンダーランド」が発動しない……。
太宰が手招きすると、大人しく腕の中に戻るアリス。
「アリスが探偵社の皆に嘘を付いて庇う程、アキト君の事を大事にしている事くらい判っているさ。それを踏まえれば、この結論を出すことなんか難しいことではないよ。」
「……うん。」
「にしても私にも話していないことが、まだまだ山のようにあるね。そんなに信用ないかい?」
「無い。」
「そんなにハッキリと…。流石に傷つくよ。」
クスクス笑いながら太宰に答えるアリス。
「……嘘だよ。そんなんじゃない。アキトが両親の事を知りたいだなんて云わなきゃ、思い出す気なんて無かった。」
「そんなに嫌な思い出かい?」
「そうだね。」