第12章 意図的な再会
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「『麻薬の売買』に関与していた?」
「うん。元々は□□□って云う密輸組織がポートマフィアの積み荷を横流しにしてたみたいだね。其れを知り合いのフロント企業に『金になる』って話を持ち掛けたみたい。」
事務所で捜査報告をするアリス。
何時もの様に短時間で膨大な情報を得てきていることに、敦と谷崎は落ち込んだ様子で聞いている。
「成程。裏組織に頼むより反応が遅れるね。」
アリスを抱きかかえて座っている太宰が話に混ざる。
「まあでも、当然ポートマフィアも馬鹿じゃないんだから荷物の横流しを行った□□□から襲うわけでしょ?」
「そうだね。そして拷問の末に聞き出した企業を襲い始めた、と。」
「その通り。国兄、此れが経緯だよ。」
「そうか。ご苦労だった。それで他に関わっていた企業は判るか?」
「それがねぇ…その情報だけ意図的に消去されてるみたいで見付からなかったんだよ。探偵社に依頼した事がバレたのかもしれない。ポートマフィアの誰かを吊し上げれば出てくるかもしれないけど勝手にそんなことしたら怒られるかもって思って戻ってきちゃった。」
ごめんなさいと言いながらペコリと頭を下げる。
「いや、賢明な判断だ。」
アリスの頭を撫でると直ぐに自分のデスクに戻り、谷崎と敦に指示を出す。
「谷崎、敦!この情報を元に、既に全焼した企業と取引があった企業を洗いだせ。」
「「はい!」」
「可能性で企業を絞るようだね。」
その指示を端から聞きながら太宰がボソリと呟く。
「…怒ってる?」
「私が?何故?怒られる様なことをしてきたのかい?」
「治兄に怒られる様なことは全くしてきてないよ」
その光景を見ながら呟く太宰に、その胸に顔を埋めて反応するアリス。
その頭を撫でてやると完全に太宰に抱き着く姿勢をとる。
その姿に気付く国木田。
「疲れた様だな。太宰、アリスを連れて先に帰っていいぞ。報告書は明日提出しろ。」
「国木田君はアリスに優しいなぁ。私にもそれくらい優しくしてくれたならもっと真面目に頑張るのに。」
「貴様のそれは嘘だろう!?いいからさっさと帰れ。」
「じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらうよ。帰ろうねアリス…って寝ちゃったかな?」
よいしょ、と片腕で抱き上げるとそのまま探偵社を後にした。