第12章 意図的な再会
「……すぐ帰ってくるから。」
「それは何処に出掛けるにしても約束してるでしょ。」
「………口止め料、増やして良いよ。」
「そこまで云うなら仕方ない。用を済ませたら直ぐに戻るんだよ?」
「ホント性格悪い。……知ってたけど。」
ニッコリ笑う太宰に、呆れ顔でそう言いながらアリスは店から出ていった。
姿が見えなくなるまで見届けるとコーヒーに口を付け、アキトの方に向き直す。
「いいんですか?そんなに簡単に行かせて。罠かもしれませんよ?」
「罠ね。そんなハイリスクな罠を仕掛けているとは思いもよらなかったよ。」
「………。」
「まあ中也がアリスと敵対するわけ無いからね。」
「……何でそう言い切れるんですか?」
「付き合いが長いからね。君よりもアリスに詳しい。本気で殺しにかかって精々相討ちだろうけど……それでも死ぬのは中也だけだろうね」
「!」
そんなに姉さんは強いの?
いや、でもこの間も中也さんが謝罪して場を納めてた……敵対したくないって事だろうし……
アキトの頭は疑問で埋め尽くされている。
「依頼は此れで完了したので私もそろそろ帰るよ。依頼料は此処の支払いで。」
「有難うございました。正直、会ってもらえるとは思ってなかったので……貴方のお陰です。」
太宰に頭を下げながら礼を云うアキト。
「たとえ私が居なくとも、君の特徴を聞いた時点でアリスは君に会っていたさ。」
「え……?」
「そして君にこう告げる。『白昼堂々、策もなしに敵陣に足を踏み入れるなんて馬鹿なの?』ってね。」
「僕が敵かどうかなんて他の人は判らない事じゃないですか。現に、探偵社の方々は知らなかった。」
「そう。それだよ。」
「え?」
ニッコリ笑って席をたつ太宰。
「その理由が判れば、他の事も色々見えてくるものがあるさ。」
「!」
では私はこれで。と告げて去っていく太宰の姿をアキトは黙って見送った。